2017年8月7日(月)
前回に続き、憧れの日本アルプスデビュー戦、常念岳〜燕岳1泊2日の様子をお届けします。後編の今回は2日目、大天井岳〜燕岳の様子となります。ガスガスの前日から一転、大快晴の下、絶景の中を歩く至福のひと時のレポートです。
大天井岳(おてんしょうだけ)
標高2922m。日本二百名山。常念山脈最高峰であるが、周囲のオールスターと比較するとあまり特徴的でない山容からか、百名山の槍ヶ岳・常念岳と二百名山の中でも屈指の人気を誇る燕岳といった個性豊かな三山に挟まれた立地からか、若干地味なイメージもある山。直接大天井岳に登る登山道はないため、一般ルートでは最短でも標準タイムで約7時間以上を要する。大天荘から約10分で頂上に到達でき、人気の山々を間近で眺めることができる素晴らしい山だと思うのだが。
燕岳(つばくろだけ)
標高2922m。日本二百名山。新日本百名山。非百名山の中ではトップクラスに人気の山といっても過言ではないだろう。遠景で目立つ山ではないものの、美しい花崗岩の山肌、表銀座の始発地点かつ中房温泉の登山口から比較的アプローチしやすいこと、そして人気の山小屋燕山荘。とにかく人気の山、という印象が強い山である。高山植物の女王コマクサの宝庫であり、白く美しい山肌を持つことなどから「北アルプスの女王」と呼ばれることもしばしば。ちなみに南アルプスの女王と呼ばれるのは仙丈ヶ岳。
1日目の記事、前編・常念岳〜大天井岳はこちら↓↓
地図・行程
今回のルート、常念岳〜燕岳は上図の通り北アルプスの南東部に当たります。
槍ヶ岳や穂高岳など北アルプスの主脈を成す山列の隣に位置しており、稜線上ではずっと槍ヶ岳や穂高岳を間近で眺めることができます。
今回のルートです。1日目は一ノ沢登山口から常念岳を経て大天荘までの赤いルート、2日目は大天荘から燕岳まで縦走して中房温泉に下山する青いルートです。
山と高原地図は北アルプス南部のオールスターと共に「槍ヶ岳・穂高岳」編に掲載されています。
【所要時間】 9時間44分 (行動時間6時間18分 休憩時間3時間26分)
1.絶景と幸せに包まれる大天井岳山頂
山小屋の朝は早い。3時半起床、4時出発で大天荘を抜け出し、裏手の大天井岳山頂へ向かいます。
外に出ると、オレンジに染まり始めている東の空、満月の月明かりが眩しい西の空、そして満点の星が輝く頭上の空という美しい光景が迎えてくれました。
なお、当時の写真のスキルではブレブレの写真を撮るのが精一杯・・・
ちょうど槍ヶ岳付近に月が沈むというベストロケーション。にも関わらずブレブレ・・・笑
前日どんなに見たいと願っても見ることができなかった槍穂高連峰の全貌が、はっきりと姿を現してきました。
北側に目を転じれば、北アルプス中部〜北部の山々が鎮座しています。中央奥の一際大きな山塊が立山でしょう。
徐々に空が美しいコントラストを描き始めてきました。雲が朝焼けに染まり、いい味を出してくれています。
南東側に目を転じれば、昨日登った常念岳が存在感を放ち、さらにその奥の大雲海から八ヶ岳、南アルプス、そして富士山が顔を出しています。
まさか約200km離れた富士山がこんなにもはっきり見えるとは。感動するとともに、改めて富士山の偉大さを感じました。
そうこうしている間に、ご来光。初めて山の上から見るご来光は、これも言葉で言い表せない感動を味わうことができました。
日の出とともに、強く、それでいて優しい光で絶景たちが照らし出され、さらに肌寒かった空気を温めてくれる。富士山の偉大さの次は、太陽の偉大さです。
さあ最高の時間の始まりです。
槍と朝焼けとモルゲンロート。
槍ヶ岳の右下に、私が今いる大天井岳の影が。影大天井ですね。これもまた貴重な体験。
穂高岳と
槍ヶ岳。このかっこよさ、もう言葉はいらない。
気持ち良い青空の中、ヘリコプターが爆速で飛んでいきました。
改めて、どちらを向いても絶景。南西を見れば、言うまでもなく槍穂高連峰の最強の景色。
西の方向には、北アルプス奥地の山々。鷲羽岳、水晶岳、双六岳など名峰の数々が一望できます。
北〜北西方向は、北アルプス北部〜中央部の山々。やはり中央奥の立山・剱岳の存在感は異常です。
アップにするとこの迫力、この存在感。こうして、行きたい山がまた増えていく。
北方面には、この後歩くことになる、燕岳へと続く表銀座縦走路の稜線。この時間帯でしか見えれない、美しい光のコントラストです。奥には針ノ木岳が存在感を放ち、後立山連峰の爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳まではっきり見えています。
南東方向は、常念岳・蝶ヶ岳と遠く八ヶ岳、南アルプス、そして富士山。
そういえば、興奮しすぎて大天井岳の山頂標を撮っていませんでした。360度の大展望、最高の展望台でした。
名残惜しいですが、山頂に1時間以上も滞在してだいぶ堪能したので、大天荘に帰ります。あと数時間いても飽きなかったと思いますが、さすがに今日も歩かないといけないので。
それにしても、大天荘のポテンシャルはとんでもないな、と。この山頂までわずか徒歩10分。山小屋の清潔感、サービスともに文句無し。是非再訪したいと思わせてくれる最高の環境でした。
2.表銀座縦走路を行く〜幸せな散歩道
大天荘で朝食をかきこみ、支度を済ませて出発します。まだ朝6時半なのに、すでに今日の充実感がすごい。
大天荘前からの景色。なんと贅沢な…!
東を向けば、太陽に照らし出された雲海。
本日歩くビクトリーロードがこちら。最高に幸せな散歩道です。
北アルプス中部の山々がかなり見える角度になってきました。もう楽しくてしょうがない。
ずーっと立山が見える登山道。立山行きたい、行きたい、行きたい・・・
このあと向かう燕岳&燕山荘をアップで。地味にアップダウンあるなあ、と。
槍ヶ岳方面との分岐点。日差しが強いので、派手にゴースト(右下の光環)が発生してしまった。。。
喜作レリーフ。表銀座縦走路、又の名を喜作新道。これを開拓した小林喜作氏のレリーフです。
登山道の開拓って、信じられないくらいの難事業だと思うのですが、このような方々のおかげで我々は登山を楽しむことができているのです。改めて感謝ですね。
切通岩。左側は崖なので高度感はありますが、雨に濡れていなければ初心者でも問題なく通過できるかと。
大天井岳を振り返る。大きい。実に大きい。
大天井の影から、隠れていた槍ヶ岳が見えてきました。ここからは常に、「振り返れば槍」です。
体力・気力ともに満ち溢れているのですが、後ろの景色が気になって振り返りまくるので、一向に進みません。
後ろを振り返らずともこんな景色。幸せすぎて笑いが止まりません。
南東側には遠く富士山も見える角度になってきました。爽快な雲海。
燕岳に近くにつれて、「高山植物の女王」ことコマクサが目立つようになってきました。
右側のピーク上に、肉眼でははっきりと燕山荘が見えるようになってきました。この辺りは稜線付近まで木々が覆っており、緑色が非常に濃い。
大天井岳から歩いてきた稜線。なんとも幸せな道でした。
これが表銀座の本気か…。
大下り。大天井側から来ると少し急な坂を登りきったところにあります。
かなり展望が良く、大天井・燕間で一番のビュースポットだと思います。
大天井・燕間は本当によく整備されていて歩きやすい道です。
大下りを登り切ってしまえばい、もう大きなアップダウンはありません。ビクトリーロードでしかない。
稜線の東側の景色。左端に見えているのは二百名山の一角、有明山。別名「信濃富士」です。
大きな岩がゴロゴロ。地面の色も少しずつ薄くなってきて、大天井岳周辺とは様子が変わってきました。
いよいよ、燕山荘と燕岳の姿をはっきりと捉えました。幸せな散歩道もあと少しです。
3.北アルプスの女王、燕岳
大天荘から3時間あまりで燕山荘に到着。幸せすぎる3時間のお散歩でした。
燕山荘名物(?)変な石像です。思っていたよりだいぶ小さかった。
燕岳。3000m近い山の上とは思えない、砂浜のような地面が広がっています。花崗岩の山特有の景色ですね。有名どころだと、甲斐駒ヶ岳や日向山なんかが同じ系統です。
日向山に行った際の記事はこちら。
有名なイルカ岩。確かに言われてみればイルカに見える気がしますね。それより、背景に雲が増えてきたのが気になる。
登山道の脇には、コマクサが群生しています。よくこんな花崗岩の地面の上に生えることができるなあ、と感心します。
花崗岩とハイマツ。燕岳の象徴的な風景です。
燕岳山頂に到着。これだけ人気かつ有名な山にも関わらず、山頂標は立っておらず石の表示だけでした。花崗岩の岩山なので、標識を立てられないのですかね?
燕岳山頂から望む燕山荘と槍ヶ岳。表銀座稜線の東側(左側)から雲がすごい勢いで攻め込んできています。
山頂に人が増えてきたので、燕山荘へ戻ります。
行きに取り忘れたメガネ岩。うーん、メガネ・・・ですかね・・・?
燕山荘に帰還しました。本当におしゃれで綺麗な山小屋です。標高2700m越えの場所とは思えません。
燕山荘にてコーラを調達。乾杯する相手がいないので、槍ヶ岳と乾杯です。
その後、のんびりご飯を食べたり、燕山荘の売店を眺めたりして過ごします。のんびりしたいというより、この至福の時間を終わらせたくない気持ちが強い。
のんびりしている間に、だいぶガスに覆われてきてしまいました。この日の天気は下り坂の予報なので、流石にそろそろ下山します。
まずは非常になだらかな尾根を進むと、三角点とベンチが現れます。
登山者カウンターなるものがありました。合戦尾根のカウンターは結構すごい数字になってそうですね。
あっという間に合戦小屋に到着。
名物のスイカを食べたいなあ、なんて呑気なことを考えていたところ、スタッフの方から重大情報が。
この日は台風が接近してきていて、夜から天候が荒れるという予報でしたが、すでに場所によっては大雨が降り始めているらしい、と。そして、下山口の中房温泉からの道は天候によっては通行止になる可能性がある、とのことでした。
もともと、温泉に入ってから15:55発の最終バスに乗ろうと思っていたのですが、一本前の14:00発を狙って急いで下りる事にしました。
富士見ベンチ。登山道が歩きやすいのはもちろん、こまめにベンチが設置されていて、本当に親切な道のりです。
第三ベンチ。燕山荘からの中間地点を超えました。
第二ベンチ。なんとか14時のバスに間に合いそうです。
合戦小屋の荷揚げ用ケーブルですかね。このおかげで名物のスイカを食べられるのでしょう。
第二ベンチを過ぎたあたりから、突然雨が降り始めました。しかも、いきなり本降りです。
写真など撮っている余裕もなく、必死に下山しました。
雨が降り始めて約30分、なんとか無事に中房温泉までたどり着きました。
しっかり、14時のバスに間に合う13時45分到着です。
バスは2台出ましたが、2台目は乗客たったの3人。バスの中でゆったりと雨に濡れたウェアも着替えられました。
ちなみに、今回の逆ルートだと帰路で一ノ沢からタクシーを使わなければなりません。これが今回の一ノ沢→常念岳→大天井岳→燕岳→中房温泉のルートを選んだ理由です。行きは毎日アルペン号だと一ノ沢まで行ってくれるんですけどね。流石にソロでタクシー前提は躊躇してしまいます。
15時前に穂高駅に到着。いつの間にか、雨は止んでいました。
15:22発の特急あずさに乗り込み、19時頃には帰宅…のはずだったのですが、この後さらに一波乱がありました。
遅延しながらも、山梨と長野の県境付近の富士見駅まではたどり着きましたが、ここで電車は完全ストップ。どうやら、台風の中心からは離れた「アウターバンド」という雨雲によって、大月付近が大雨となっていたらしく、中央線は運転見合わせとなっている模様です。
1時間近く粘りましたが、甲府から先は終日復旧しない可能性もある、というアナウンスを受けて諦めました。
結果、富士見→松本→長野→東京と大回りルートで新幹線を使って帰る羽目に。日付が変わる直前、予定より約5時間遅れでようやく家にたどり着きました。
最後にハプニングはありましたが、長い至福の旅だったことは間違いありません。
まとめ
北アルプスデビュー戦2日目は天候にも恵まれ、最高の絶景を堪能できました。
空と大地が美しいグラデーションを織りなす早朝から
山々が眠りから覚める時間まで、至福の時間を大天井岳山頂で過ごし、
幸せな縦走路をのんびり歩き、
北アルプスの女王、燕岳を訪れました。
さすがは登山者の聖地、北アルプス。さらにその中でも屈指の人気を誇る山域です。好天時にここを訪れて、感動するなという方が無理な話でしょう。
夏山らしい夏山を堪能し、登山という趣味にズボズボとハマっていく音が聞こえるような2日間でした。
今回もまた一つ、私の地図に新しい頁が増えました。次の山行も幸せなものになることを祈って。