【NPB】2020シーズン開幕記念考察記事 〜約3ヶ月遅れの開幕がもたらす影響とは〜

全世界を襲った新型コロナウイルスの脅威は、日本国内に限定して見てもまだまだ完全に払拭されたとは言いがたい状況ではありますが、ついにプロ野球が開幕しました。

現地観戦に行ける日はもう少し先になりそうですが、何はともあれ我々の日常にスポーツが帰ってきた!

ということで、プロ野球開幕記念企画として、6/19開幕がもたらす影響について少しだけ考察してみようかと。

考察の背景

例年は3月下旬〜4月頭に開幕しているNPBですが、今年は新型コロナウイルスの影響で6/19開幕となりました。開幕延期による影響を過去データを用いながら少し考察してみよう、というのが今回の趣旨です。

データを見る前に、まずは定性的にどのような要因が発生すると考えられるのか、列挙して見ましょう。

  • 春先の試合がなくなり、夏場〜秋の試合が増えることによる季節要因(当記事のメインターゲット)
  • 休養日が少なく、過密日程気味となる。
  • 交流戦が開催されない。
  • 延長10回で打ち切り、ベンチ枠増員等による、選手起用の変化
  • CS開催方法の変更(セは開催せず、パは1位vs2位のみ。終盤の2位・3位争いの動向に影響がありそう)
  • パリーグは同一カード6連戦。
  • 試合数が120試合に。

大きくはこんなところでしょうかね。このうち、過去データから定量的に評価しやすそうなのは1・3点目。ただ、交流戦のデータはいくらでも転がっていそうなので、今回は1点目にフォーカスしてみようと思います。

過去データからの考察

さて、今回は「〜6/18」「6/19〜」に分けて、過去10年間(2010〜2019)の勝敗を集計しました。

データを見る前に、集計したデータについて定性的に性質を考えてみましょう。単純に考えると、「6/19〜」のデータが2020シーズンの参考となりそうですが、鵜呑みにするのは良くありません。

  • 各チームの「季節性」はデータに現れているはず。
  • 6/19は例年、交流戦最終盤。すなわち、交流戦の結果は大部分が「〜6/18」に含まれるため、セ・リーグのチームは後半の方が、パ・リーグのチームは前半の方が、やや勝率が高い傾向にある。この要素は、2020年に当てはめるには撹乱要因。
  • 「疲労度」という意味では、2020年6月19日の状態はどちらかというと例年の開幕時期に近い状態であるはず。一方で、例年以上の過密日程なので、開幕後の疲労蓄積は2020年の方が厳しくなるか。

データを集計して比較するだけなら、誰でもできますし、同じルールで集計すれば誰でも同じ結果が出ます。しかし、データは簡単に嘘をつきます。例えば、2点目の「交流戦」の要因を見過ごしてしまうと、「セ・リーグの球団は後半戦の方が強い傾向がある」という意味不明な結論を出してしまったりします。それを防ぐためにも、しっかりと要因を定性的に考える必要があるんですね。

だいぶ前置きが長くなりましたが、「〜6/18」「6/19〜」で区切った過去10年間のデータです。(手集計に近いので、間違いがあってもご容赦ください。)

前述の通り、交流戦の影響でセ・リーグは5球団が後半の方が、パ・リーグは5球団が前半の方が高い勝率となっています。「前半と後半の勝率差」のセ・リーグ全体が+0.016、パ・リーグ全体がー0.016です。

この中で、「前半と後半の勝率差」のリーグ全体からの乖離が大きいのは、ヤクルト(+0.030)阪神(ー0.039)西武(+0.030)ロッテ(ー0.036)の4球団です。

「〜6/18」が約600試合、「6/19〜」が約800試合。計算の詳細は割愛しますが、二項分布から勝率の標準偏差を求めると、600試合で約0.020、800試合で約0.018となります。ものすごくざっくり言うと、これを超える乖離は偶然とは言い難くなってくるかと。すなわち、前述の4球団は「後半戦に強いor弱い」傾向にあると言える水準かなと思います。

身近な例で言い換えてみましょう。標準偏差並みの乖離と言うのは、一発勝負のテストで偏差値60or40を取るのと同水準の乖離です。一回のテストで偏差値60を記録した受験生を、平均より優秀とみなすか、ただのマグレとみなすか。

さて、前述の4球団のデータをもう少し見てみましょう。年度別推移を並べてみます。まずは後半の勝率が高かったヤクルト西武

ヤクルトはド派手なグラフになっていますね。2010、2015、2018と定期的に後半戦爆発している一方、2017はかなり苦しい戦いを強いられました。
西武は2011〜2012、優勝した2018〜2019の後半戦の強さが際立っています。

いずれも打撃力、特に長打力に定評があるチームです。投手陣がバテてきた夏場以降に打ち勝つ試合が多い傾向があるのかもしれません。

続いて、前半戦の方が勝率が高い阪神ロッテです。

セ・リーグは軒並み後半戦の方が高い勝率の中、阪神はコンスタントに前半戦のほうが高い勝率になっています。近年は夏の甲子園期間中の「死のロード」の影響は小さくなってきていると聞きますが、他の要因があるのでしょうか。
一方のロッテは、ポストシーズンに強い印象があったので、個人的には意外な結果でした。前半戦は10年累計で0.499と言う勝率である一方、後半戦で勝率5割を超えたのはたったの2回。明確に後半戦の方が勝率が低いという結果となりました。

共通点としては、ヤクルト・西武とは逆で、比較的投手力・守備力に定評があるチームという印象でしょうか。攻撃型チームと守備型チームの間で有意な差があるかどうか、は次の研究課題として面白そうです。

データ集計前は、選手層の厚いソフトバンク・巨人などが後半戦強いのかな、と予想していたので、全体的に少し想定と違った結果となりました。そもそもこの2球団は前半戦も勝率が高いので、後半戦に限ってもそれぞれリーグ1位の勝率ですがね。

繰り返しにはなりますが、今回のデータ集計だけでは今シーズンの行方を占うには不十分です。しかし、こうやってデータ集計してあれこれ考えるのは楽しいですし、これを見た誰かがまたあれこれ考えてくれたら嬉しい限りです。

タイトルとURLをコピーしました