画像出典:https://www.atpworldtour.com/en/tournaments/nitto-atp-finals/605/overview
全米OPが終了し、いよいよFinals出場権争いも佳境を迎えてきました。グランドスラムは4/4大会終了、マスターズは7/9大会終了ということで、残るビッグイベントはマスターズ2大会のみです。
それにしても、Twitterにも少し書きましたが、やはりグランドスラム決勝でのBIG4の強さは異常です。
これでGS決勝は7大会連続BIG4vs非BIG4となったが、BIG4の全勝。しかも、2018全豪のフェデラーvsチリッチ以外は全てストレート勝ち。やはり、GS決勝のBIG4は、より一層強さを増す…
— wady (@wady_wady_wady) 2018年9月9日
参考
2017全仏 ナダル62 63 61 ワウリンカ
2017WB フェデラー63 61 64 チリッチ
2017全米 ナダル 63 63 64 アンダーソン
2018全豪 フェデラー 62 67 63 36 61 チリッチ
2018全仏 ナダル 64 63 62 ティエム
2018WB ジョコ 62 62 76 アンダーソン
2018全米 ジョコ 63 76 63 デルポトロ— wady (@wady_wady_wady) 2018年9月10日
ワウリンカ、チリッチ、アンダーソン、ティエム、デルポトロ。これだけのメンバーを、しかもそれぞれの得意サーフェスで揃えてもこの結果です。決してフロックで決勝まで上がってきた選手ではない、決勝でも素晴らしいプレーをしている、それでも結果だけ見ると圧倒的になってしまう。この大会全体、ツアー全体を見据えたピーキングの上手さがBIG4のBIG4たる由縁の一つなのでしょう。やはりBIG4の壁は、とてつもなく高い。
半分本気で、この状況を打破するには研究され尽くした現時点のTOP選手よりも、15〜30位くらいの選手が突然覚醒する(体力消耗をある程度抑えられるくらいのドロー運も必須)パターンの方が可能性高いのでは、と思い始めて来ています。。。簡単に言うと、2014全米のチリッチ、錦織みたいなイメージですね。
さて少し話が逸れましたが、本題に移りましょう。今回はウィンブルドン後に書いた↓の記事のアップデート版です。

1.現状の整理
まずは現状を整理しましょう。
グランドスラム優勝者の3人、ナダル、ジョコビッチ、フェデラーはATP公式でも出場権確定がすでに発表されています。デルポトロ、A.ズベレフも間違いないでしょう。あの伝説の2014ですら9位のチリッチは4150ptです(結果的にチリッチは出場権を得ていますが、あくまでポイントの比較として)。A.ズベレフが現在4365pt、ここから仮に全く勝てないとしても圏外にはならない水準と見ています。
そして、前回の記事で出場権争いの対象と分類していた5人、ティエム、チリッチ、アンダーソン、イズナー、錦織です。
5人中4人が全米QF以上、残るアンダーソンもカナダMSでSFとそれぞれポイントを伸ばしました。チリッチはカナダSF、シンシナティQF、全米QFと900ptを重ね、やや一抜けした感が出てきましたが、残り4名での争いはまだまだ予断を許さない状況です。
北米ハードシーズンを経て、出場権争いがさらに激化しそうな展開となった一番の要因は、全米での直接対決2試合の結果でしょう。すなわち、QFのチリッチvs錦織、R16のアンダーソンvsティエムです。いずれも、シード順的には下位の錦織とティエムが勝利しました。ここでチリッチとアンダーソンが勝利していたら、アンダーソンまで7枠が事実上確定、錦織は絶望的、残すはティエムイズナーの一騎打ちのみ、という展開になっていたでしょう。
結果的に、アンダーソンにも出場権を逃す可能性が若干残った一方、錦織の逆転の光も僅かながら残りました。ティエム、イズナーを含め、4人の争いはもう少し継続しそうな展開となっています。
2.直近のロンドン争いを振り返ってみる
直近4年分の「全米後」および「最終」のレースランキングをまとめました。「afterUSO」は全米後に積み上げたレースポイントの値です。期間が短くなってきているので、だいぶ数字のばらつきも大きいですが、特にボーダーライン付近の6〜10位あたりかつ怪我による離脱者以外を中心に眺めてみると、平均は500〜600ptくらいでしょうか。マスターズQF×2+500SF×1で540ptなので、納得感のある水準かなと思います。また、毎年1〜2名はボーダー付近で1000pt以上を稼いでいる選手がいる一方、300pt未満の選手もチラホラ見えます。このくらいの順位の選手だと、好調:1000〜1300ptくらい、普通:500〜600ptくらい、不調:100〜300ptくらいといったところでしょうか。
ここから単純に考えると、錦織好調→3500〜3800、イズナー好調→3900〜4200、イズナー普通→3400〜3500、アンダーソンティエム普通→3900〜4000、アンダーソンティエム不調→3500〜3700くらいが予想されます。ボーダーラインは3500〜3700くらい、3900行けばかなり濃厚、4000で当確、という感覚でしょう。(現在3815ptのチリッチは「濃厚」くらいですかね。)
ちなみに、錦織より下の選手はというと、3500pt到達までに11位フォニーニは1560pt、12位ゴファン以降は1700pt以上が必要となります。すなわち、マスターズW+FとかマスターズW+500Wくらいの成績が求められ、理屈上はもちろん可能性がありますが、実現性はかなり低いでしょう。
3.ロンドン争い対象者5名の成績比較
前回記事と同様、前述の5名(一応、チリッチまでを含めます)の過去の成績を見てみたいと思います。あまり厳密に判定していませんが、現行のポイント制度となった2009年以降かつ年末30位前後以内となった年以降の成績をまとめています。ちなみに全て手作業でまとめたので細かい誤りはある気がしますが、結論に大きく影響しない誤りはスルーして下さい。
なお、この章のデータの「Total」欄は、OthersのBest6大会制限を考慮していません。すなわち、全大会のポイントの単純合計です。また、一部の年度では大会の順序を多少入れ替えていたりします。これらの点をお含み置き下さい。
●チリッチ
北米ハードシーズンでは、カナダQF、シンシナティSF、全米QFと安定して上位進出を果たました。全米QFで錦織に勝って4175ptまで伸ばすことができれば事実上確定となるところでしたが、それでも3800pt超えという事で濃厚となってきています。チリッチはアジアシリーズ、欧州インドアシリーズも得意としているので、最終的には4000ptを軽く超えてくるでしょう。4300〜4800ptくらいがフィニッシュ予想です。
●アンダーソン
ウィンブルドン後の記事ではフィニッシュ予想は3300〜3900ptと書きましたが、すでに3450ptまで伸ばしてきました。得意のカナダでSF進出し、当確は時間の問題かと思われましたが、全米でティエムとの直接対決に敗れ、イズナー錦織も上位進出したことで少し雲行きが怪しくなってきました。
上海、パリ共にQF1回のみとあまり相性が良い大会ではなく、過去は100pt〜400pt程度しか上積みすることができていません。今年は完全にキャリアハイのシーズンということを考慮し、若干上方修正して200〜600pt程度、フィニッシュ予想は3600〜4000pt。油断できる状況ではありませんが、出場権獲得の可能性は高いと言えるでしょう。
●ティエム
得意のクレーコートであるハンブルグ、キッツビュールで全く稼ぐことができず、マスターズ2大会も初戦敗退+欠場と黄信号が灯ったかに見えましたが、ハードコートの中では比較的得意な全米で自己最高の成績を残してチャラにしました。ただし、ここからも苦手なアジアシーズン、欧州インドアシーズンであり、さらにOthersでほぼ稼げない状況を考慮すると予断を許しません。過去と同じ成績を仮定すると、ここからの上積みは2015:90pt、2016:70pt、2017:100ptです。全米ナダル戦を見る限り、昨年までより良い成績も期待できるとは思いますが、それを考慮してもフィニッシュ予想は3500〜3800ptくらいでしょうか。
●イズナー
大得意のアトランタで優勝、全米でもQFと着実にポイントを積み重ね、8位との差も500ptを切りました。本当は最も得意な北米ハードシーズンでもう少し稼ぎたいところでしたが、最後に控える得意なパリまでにもう少し差を詰めておくことができれば、大逆転の可能性も十分出てきます。
ここ3シーズンの450〜700ptくらいが予想レンジになってくるかと思います。フィニッシュ予想は3300〜3600ptくらいです。
●錦織
そして、最後に錦織です。ワシントンではA.ズベレフに敗れQF止まり、カナダ・シンシナティのマスターズ2大会でも早期敗退に終わり万事休すかと思われました。この時、私もかなり厳しい旨をTweetしました。
TL見る限り、内容的にもあまりポジティブではない敗戦だったのかな。これでNAFは相当厳しくなった。ある意味、目先の結果にとらわれる必要が無くなったと思って、長期的視点で完全復活への計画を描いて欲しい。
— wady (@wady_wady_wady) 2018年8月16日
しかし、全米でSFという素晴らしい結果を残し、ギリギリのところで踏み留まりました。正直、QFでチリッチに敗れていたら、ほぼ望みは断たれていたと思います。本当にギリギリで議論する価値があるくらいの可能性が残った形です。
残りのマスターズ2大会はそこまで得意な大会ではありませんが、ここで一定以上の成績を残すことはもちろん必要条件となってきます。エントリーしている250のメスを最終的にどうするのか(出場するのかどうかも含めて)わかりませんが、優勝2度の東京(楽天オープン)、初出場のウィーンと合わせて500以下の大会で500〜800ptを稼ぎ、マスターズ2大会でQF+SFで540pt。このくらいの成績を収めることができれば、十分出場権を得られる可能性があります。
冷静に予想するのであれば、2011、2012の700pt台、このくらいの数値が妥当な線でしょう。フィニッシュ予想は500〜900ptの上積みで3000〜3400ptです。
●(ここまでの)まとめ
最終レースポイント(予想)の変化をまとめて見ました。
WB終了時点 | USO終了時点 | |
チリッチ | 4200〜4600 | 4300〜4800 |
アンダーソン | 3300〜3900 | 3600〜4000 |
ティエム | 3500前後 | 3500〜3800 |
イズナー | 3200〜3800 | 3300〜3600 |
錦織 | 2600〜3100 | 3000〜3400 |
全体的に少しレンジは狭めましたが、ティエム錦織は上方修正、その他の選手は微修正レベルです。
チリッチはほぼ確定、アンダーソンも濃厚、ティエムvsイズナーは接戦だがティエム有利、錦織は僅かな可能性に賭ける、という状況ですね。錦織は僅かに可能性が残った、と言っても数値で言えば5%とかそのくらい、かなり厳しい水準だと思っています。
ちなみにボーダーラインは前の章でも書いたように3500〜3700pt程度だと予想しています。ティエムをやや上方修正した影響で、少しボーダーの下限が上がっています。
4.錦織が逆転するために必要な成績
ということで、ここまでは比較的冷静に分析してきましたが、最後に錦織が逆転する条件を前回同様まとめてみたいと思います。
前述の通り、ボーダーラインは3500〜3700と考えると、出場権獲得には1000〜1200ptくらいは必要となりそうです。残り参戦する大会はおそらくマスターズ×2(上海、パリ)、500×2(東京、ウィーン)、250×1(メス)と考えると、マスターズWorマスターズF+500WorマスターズF+500F×2くらいで当確、マスターズSF+500W、マスターズSF+500F×2くらいでボーダー付近と言ったところでしょう。改めて見ると、やはり厳しいですね。ただ、全米のおかげでランキングが12位まで上がり、シード順位が上がってきたという点は好材料ではあります。
本気で大逆転を狙うのであれば、マスターズで結果を残したいのはもちろんですが、東京、ウィーンといった500の大会も非常に重要になってきます。一試合一試合、目が離せなくなってきたな、と言うことを改めて実感しました。