今年もウィンブルドンが終わり、そろそろFinals出場権争いが気になる季節となって来ました。私のブログの中でも一番の人気シリーズとなっているRoad to Londonの2019年第1弾です。(全豪後に書いたネタ記事はノーカウントということで笑)



1.現状の整理
まずは現状を整理しましょう。


レースランキング20位までの選手のポイント詳細です。
ここで注目すべきは次の2点です。
・5位チチパスと6位錦織の間に1000pt近い大きな差がある。また、8位メドベーデフと9位フォニーニの間も約200pt差があるが、それ以外は団子。
・メドベーデフ、ベレッティーニ、ペリャの3名はOthersで後ろの方まで高ポイントが埋まっている(=ここからOthersで大量加点するのは難しい)
2.過去データからボーダーを探る
以下、現状のポイント制度となった2009シーズン以降10年分(今年の分も入っているものは11年分)のデータを使用していきます。
また、2019年の展望として故障者等が出ることは考慮しませんので、過去データも実際に出場権を得たかどうかではなく、「8位以内かどうか」という点から考察を行います。


まずはウィンブルドン後のレースポイントのプロットです。ちなみに、縦軸は対数目盛を取っています。
2019年の黒枠付き赤丸を見てみると、3位の水準が例年より高く、6位〜10位台中盤までは例年より低く、20位台以降(特に40位前後)は例年より高い水準にある、という特徴がわかるかと思います。すなわち、ビッグタイトルは3強が独占、20位台以降の中堅選手の層も厚くなり、10位前後はその上下の割りを食っている、という構図が見て取れるかと思います。概ね違和感は無いかと。
ボーダーの8位がウィンブルドン後で2000ptに達していないのは、現行ポイント制度移行後の11年間で3回目となります。ボーダー付近のポイント分布を見ると、この8位が2000ptに達していなかった2009年と2011年、特に2011年の水準が参考となりそうです。


続いて、最終のレースポイントのプロットです。
8位が3000ptに達しなかったのは、2011年フィッシュの2965ptと2017年ゴファン2975ptの2例のみ。逆に、8位が4000ptに達したのは2014年ラオニッチの4440pt(!)と2015年錦織の4035ptの2例のみ。半ば伝説となっている2014年は10位のフェレールまで4000pt超え、11位ディミトロフも3645ptという大激戦でした。
今年の参考となりそうな2011年、そして中堅層が厚かった(上位層が若干薄かった)2017年がいずれも3000pt弱で8位になっていることを考えても、今年も3000pt前後で8位確保となる可能性が高いと思います。


続いて、ウィンブルドン後と最終のレースポイントをプロットしました。
赤いラインが、ウィンブルドン後1500ptと最終3000ptのラインです。
まず気づくのは、ウィンブルドン後1500pt未満で最終3000pt超えは至難の業ということです。過去10年間でわずか2例、2009年ダビデンコと2016年チリッチだけです。しかも、いずれも「TOP10常連の実力者が」「前半戦長期離脱で出遅れ」「後半戦大活躍して逆転」というパターンです。
2009ダビデンコ | 2016チリッチ | |
前半戦 |
全豪、IW、マイアミをスキップ |
モンテカルロ、マドリード、ローマをスキップ |
WB終了時点 | 1065pt(19位) | 1300pt(17位) |
WB後の主要成績 | 上海MSを含む4大会優勝 | シンシナティMS・バーゼル優勝、パリMS4強 |
最終成績 | 3630pt(7位) | 3450pt(7位) |
一方で、ウィンブルドン後2000pt超で最終3000pt未満となったのはわずか6例、しかもうち5例は後半戦の長期離脱があった影響で、コンスタントに試合に出ていたのは2014年グルビスの1例のみです。
3.現状の整理part2


第2章を踏まえた上で、改めて現状の整理をしましょう。先ほどのポイント詳細表の再掲です。
3000pt前後がボーダーになりそう、という状況を踏まえると、ジョコビッチ、ナダル、フェデラー、ティエム、チチパスの5名は当確でしょう。
6位以下はやや詳細に見ていく必要があります。まず、Othersの埋まり具合について。残りシーズンで500以下の大会を少なくとも3大会程度は出場する選手が多いかと思います。となると、2大会程度はOthersでカウントされる成績となる可能性が高いかと。Othersの下位2大会のポイントを除いてみると、やや様相が変わります。
メドベーデフ、ベレッティーニ、ぺリャがそれぞれ後退する結果となります。もちろん、他の選手が500以下の大会で好成績を納めるとは限りませんが、見た目のポイントよりは一歩厳しい状況であることは間違いありません。
これらを踏まえると、2000pt前後の6位錦織、7位アグーは有力、残り1枠(錦織orアグーが失速した場合は2枠)をメドベーデフ、フォニーニ、A.ズベレフがほぼ横一線で追う展開かと思います。
11位以下は1500pt未満であり、前述の通りかなり厳しい戦いとなります。一番可能性がありそうなのは、前半戦離脱があったラオニッチ、ようやくシード順位が上がってきたワウリンカ、爆発力のある実力者2名でしょうか。続いて、実力者モンフィス、ゴファンと成長株筆頭のアリアシム、ベレッティーニが一縷の望みを託す形でしょう。
4.残りシーズンの得手不得手について
各選手の残り大会への相性を見ていきましょう。また、残る主要大会は全てハードですので、ハード勝率も合わせて見ていきます。
6位 錦織
通算勝率.682(401W-187L)、ハード勝率.682(266W-124L)
全米:F1回・SF2回
カナダMS:F1回・SF1回
上海MS:SF1回・QF1回
パリMS:SF1回・QF1回
その他:ワシントンW1回、東京W2回・F1回、ウィーンF1回、バーゼルF2回
7位 バウティスタ・アグー
通算勝率.628(273W-162L)、ハード勝率.631(171W-100L)
上海MS:F1回
カナダMS:QF1回
その他:ウィンストンセーラムW1回・F1回、モスクワF2回、グスタードF1回、バレンシアF1回
8位 メドベーデフ
通算勝率.596(102W-69L)、ハード勝率.643(74W-41L)
その他:東京W1回、ウィンストンセーラムW1回
9位 フォニーニ
通算勝率.541(346W-294L)、ハード勝率.475(121W-134L)
シンシナティMS:QF1回
その他:ハンブルグW1回・F1回、バスタードW1回、ウマグW1回・F1回、グスタードW1回、ロスカボスW1回、成都F1回、サンクトペテルブルクF1回、モスクワF1回
10位 A.ズベレフ
通算勝率.664(204W-103L)、ハード勝率.653(109W-58L)
カナダMS:W1回・QF1回
上海MS:SF1回
パリMS:QF1回
その他:ワシントンW2回、サンクトペテルブルクW1回
11位 アリアシム
通算勝率.576(34W-25L)、ハード勝率.524(11W-10L)
12位 ベレッティーニ
通算勝率.585(48W-34L)、ハード勝率.393(11W-17L)
その他:バスタードW1回
13位 ぺリャ
通算勝率.482(95W-102L)、ハード勝率.382(29W-47L)
その他:ウマグF1回
14位 モンフィス
通算勝率.638(462W-262L)、ハード勝率.658(288W-150L)
全米:SF1回・QF2回
パリMS:F2回
カナダMS:SF1回・QF1回
シンシナティMS:QF1回
上海MS:QF1回
その他:ワシントンW1回・F1回、東京F1回、ウィーンF1回、メスW1回・F1回、ストックホルムW1回、ウィンストンセーラムF1回、アントワープF1回
15位 ゴファン
通算勝率.612(252W-160L)、ハード勝率.618(157W-97L)
シンシナティMS:SF1回
上海MS:QF1回
その他:東京W1回・F1回、バーゼルF1回、キッツビュールW1回、メスW1回、深圳W1回、グスタードF1回
16位 ワウリンカ
通算勝率.632(503W-293L)、ハード勝率.635(282W-162L)
全米:W1回・SF2回・QF2回
シンシナティMS:SF1回・QF3回
カナダMS:SF1回・QF1回
パリMS:SF1回・QF1回
上海MS:QF2回
その他:東京W1回、ウィーンF1回、ウマグW1回、グスタードF1回、サンクトペテルブルクF1回
17位 ラオニッチ
通算勝率.686(339W-155L)、ハード勝率.698(226W-98L)
カナダMS:F1回、QF3回
パリMS:F1回、SF1回
シンシナティMS:SF2回、QF2回
その他:ワシントンW1回、東京F3回、サンクトペテルブルクW1回
18位 シュワルツマン
通算勝率.516(126W-118L)、ハード勝率.515(53W-50L)
全米:QF1回
カナダMS:QF1回
その他:アントワープF2回
5.まとめ
錦織→残りシーズンの相性は○。すでに2000pt確保しており、濃厚。
アグー→残りシーズンの相性は△(並)。すでに2000pt弱確保しており、有力。
メドベーデフ→残りシーズンの相性は◎。Othersは6thが150ptと完全に埋まっており、とにかくマスターズ以上の5大会で結果を残さなければいけない。実は結構厳しい。
フォニーニ→残りシーズンの相性は、マスターズ以上はやや×、500以下は○。Othersは4枠が0ptであり、得点を積み重ねやすい。
A.ズベレフ→残りシーズンの相性は○。今シーズンは不調にあえいでいるが、得意のマスターズで上位進出できれば一気に逆転も狙える。
アリアシム→残りシーズンの相性は未知数。Othersは3枠が45ptで、意外と加点の余地はある。とはいえ、ここから約1500ptを積み重ねるだけの余力があるかどうか。
ベレッティーニ、ぺリャ→残りシーズンの相性は未知数。Othersの加点余地はあまりなく、逆転のためにはマスターズ以上でのビッグポイントが必須となる。
モンフィス、ゴファン→残りシーズンの相性は○。1500pt以上を稼ぐためには絶好調を残りシーズンキープし続ける必要があるか。
ワウリンカ、ラオニッチ→残りシーズンの相性は◎。1500pt以上を稼ぐ必要があるのは変わらないが、爆発力があるのでグランドスラムSF、マスターズF以上クラスのビッグポイントを取って逆転する姿は想像できなくはない。
ということで、やはりメドベーデフ、フォニーニ、A.ズベレフが横一線で最後の一枠を争う形が最も可能性が高いでしょう。大逆転が起こるならば、ワウリンカ、ラオニッチか。アリアシム、ベレッティーニあたりがここから3000pt超えてきたら、正直かなりのサプライズです。ボーダーが2700pt台くらいまで下がる展開となれば、20位くらいまでの選手全員にチャンスが巡ってくるでしょう。
ひとまず、「3000pt」というのは今年は当確の目安になってくると思いますので、各選手3000まであと何ptかを計算しながらこれからのシーズン見てみると良いのではないかと思います。