【プレビュー】2018Week33(シンシナティMS)

Week32(カナダMS)の振り返り

【プレビュー】2018Week32(カナダMS)
トロント(カナダ、Masters、Hard) 北米ハードシーズンのビッグイベントの先陣を切るのは、カナダマスターズです。この大会の特徴といえば何と言っても、会場が隔年で変わることでしょう。カナダのトロントとモントリオールで男女の大会が交互に...

執筆時点ではまだナダルvsチチパスの決勝が行われていませんが、決勝がどのような結果になろうとも、今大会最大のトピックスはチチパスの快進撃で問題ないでしょう。ジュメール→ティエム→ジョコビッチ→サーシャ→アンダーソンを撃破しての決勝進出は、とんでもない価値があります。特に、カナダMS4回優勝を誇る復活したジョコビッチ、ディフェンディング・チャンピオンの第2シードサーシャ、今年抜群の安定感を誇る第4シードアンダーソンを立て続けにフルセットで破るあたり、単なる勢いだけではなく勝負強さも兼ね備え始めています。決勝の相手は、ツアー初決勝だった今年のバルセロナ決勝と同じくナダル。ここでさらにナダルも破って優勝となると、本当に大変な快挙となります。

対するナダルは、流石の内容で勝ち上がってきました。ワウリンカ、チリッチと素晴らしいゲームを繰り広げ、準決勝では勢いに乗るカチャノフ相手に要所を締めてストレート勝ち。快進撃を続ける若手の挑戦を悉くはね返してきた「Big4」がここでも大きな壁となって立ちはだかるのか、楽しみな決勝戦となりそうです。

4強はカチャノフアンダーソン。カチャノフのハイライトはやはり今シーズン強いイズナーをタイブレ2発で破った試合でしょう。一度もブレークできない展開でしたが、タイブレ2本を集中して取っての勝利は大きいものでした。一方のアンダーソンは流石の安定感です。これでマスターズ2度目のSF。初のSFまで10度もQFで止められた選手とは思えません。

その他では、ナダルに敗れはしたもののワウリンカが素晴らしいテニスを見せてくれました。復帰後もなかなか思うようなテニスができていませんでしたが、いよいよ完全復活が近づいてきているようです。グランドスラムに強いワウリンカですから、全米OPでの活躍を期待してしまいます。

一方で、デルポトロバウティスタ・アグーチョンと3名の棄権者が出てしまいました。特にデルポトロは手首の痛みということで非常に心配されます。デルポトロ、チョンはシンシナティにエントリーしており、すぐ近くのドローを引いていますが、彼らがどのような状態かは気になるところです。

また、3名が出場した日本勢は残念ながら全員が初戦敗退となってしまいました。予選通過で力を使い果たしてしまった西岡はともかく、錦織杉田は不完全燃焼の大会だったことでしょう。次の大会では…と考えていた側から杉田はシンシナティ予選で西岡に敗れてしまいました。昨年のシンシナティQFの失効により、再来週のランキングでは90位台まで落ちてしまう見込みです。全米OPでの活躍を期待したいところですが…

シンシナティ(カナダ、Masters、Hard)

チチパス決勝進出の衝撃も冷めやらぬ中、次はシンシナティマスターズです。次々とビックイベントが訪れ、改めてATPツアーの日程の過酷さを感じます。

シンシナティといえば、フェデラーの庭の一つであり、実に7度の優勝を誇ります。そのフェデラーが欠場していた直近2年間はチリッチとディミトロフがそれぞれマスターズ初優勝を飾りました。2年連続Big4以外が優勝することも、2年連続初優勝者が生まれることも、現ツアー体制となった2009年以降のマスターズでは初めてです。

また、現在開催されているマスターズ9大会の中で、ジョコビッチが唯一優勝していない大会でもあります。彼が優勝すれば、現行9大会全制覇という前人未到の記録に到達することになります。ちなみに、ジョコビッチはシンシナティが苦手というわけでもなく、5度も決勝に進出していながら、フェデラーに3度、マレーに2度敗れています。今大会もマレー、フェデラーはいずれも決勝でしか当たらないドローです。もし決勝で彼らを破って優勝ということになれば、これ以上のシナリオはないでしょう。

日本勢は錦織がDA、杉田、ダニエル、西岡が予選からの参戦でしたが、杉田、ダニエルは予選1回戦で敗れてしまいました。西岡は予選突破をかけて、メドベーデフとの対戦となります。

※以下、各種データは予選勝者決定前かつカナダMS決勝前時点のものとなります。

■ナダル山

1度優勝はしていますが、決勝進出はその1回のみ、SFも約10年前に2回と、比較的得意ではない印象がある[1]ナダル。そうは言っても得意ではない(当人比)ですので、もちろん優勝候補筆頭クラスですが、カナダMS決勝進出に加えてシンシナティのタフドローがどう影響するかは不安要素ではあります。ラオニッチ→シャポバロフ/ティアフォー/エドムンド→ジョコビッチ/ディミトロフ→サーシャ/チリッチ/イズナー→フェデラー/デルポトロ/アンダーソン/マレーが予想対戦相手であり、なかなかのタフドローです。これをなぎ倒していくようだと、ナダル一強時代到来もあり得そうですが、どうなるでしょうか。

ナダルと2回戦で当たることが予想されるのがラオニッチ。得意のカナダMSではゴファンを下したものの、ティアフォーに敗れて2回戦敗退となってしまいました。今年のラオニッチは身体の状態次第という感じで、良い時と悪い時の差が大きいような印象がありますが、2度のSF進出があるシンシナティで注目を集めることはできるのでしょうか。

[10]ジョコビッチはマスターズ完全制覇に向けてモチベーションも高いでしょう。カナダMSではチチパスに敗れましたが、ジョコビッチが悪かったというよりはチチパスが単純に良いプレーをしていた結果なので、あまり心配はしていません。むしろ、疲労が少なくシンシナティを迎えられたので、悲願の初優勝を飾る可能性は高まったのでは、とまで思っています。

そのジョコビッチとR16で激突するドローを引いてしまったのは[5]ディミトロフ。順当に上位選手が勝ち上がると、R16以降はジョコビッチ→ナダル→サーシャorチリッチという辛すぎるドローです。ディフェンディング・チャンピオンは茨の道を突き進めるでしょうか。ディミトロフは現在のポイントのうち半分以上がシンシナティ優勝+NAF優勝です。実は地味に大量失効が迫っており、上位シードの間に少しでもポイントを稼いでおきたいのですが、なかなかドロー運に恵まれませんね。

地元米国開催の大会が比較的得意な[WC]ティアフォーは昨年もA.ズベレフを破ってR16まで進出しており注目です。

SF進出争いは、本命:ジョコビッチ、対抗:ナダルディミトロフ、穴:ラオニッチ、大穴:ティアフォーという予想です。Big4に挑むYoung Gunsのラオニッチ、ディミトロフという構図のブロックという印象を私は持っていますが、サーシャ、チチパスなど若手の突き上げが物凄い中、Young Gunsの意地をみたいです。

■A.ズベレフ山

カナダMSではSFMまで行きながら半分自滅のような形でチチパスに敗れた[3]A.ズベレフ。その後の会見でもご乱心気味だったようですが、彼もまだ21歳の青年です。そりゃああれだけ成すこと全てが上手くいかないような状況に突然陥ったら冷静でいるのも難しいでしょう。昨年のシンシナティはカナダ優勝後でお疲れ気味でしたが、今回は気持ちを切り替えて全快で臨んで来ることでしょう。上位進出が期待されます。

A.ズベレフの反対サイドには[7]チリッチ[9]イズナーというシンシナティで大きな結果を残している実力者が入りました。

[7]チリッチは一昨年のチャンピオン。カナダでもナダルと好勝負を演じており、変わらず好調をキープしているようです。

[9]イズナーは2013年のファイナリスト。ガスケ→ラオニッチ→ジョコビッチ→デルポトロと物凄いドローを勝ち上がり、決勝でナダルの前に屈しました。昨年もSFまで進出するなど、得意な大会です。カナダではカチャノフに敗れましたが、そのカチャノフと2回戦で当たる可能性があるドローで、早速リベンジのチャンスが巡ってくるかもしれません。

そのカチャノフはカナダでイズナーを破り、自身初のマスターズSF(過去最高:R16)を達成しました。昨年は自身初のマスターズR16を果たしたこの大会で、再びイズナーを破って飛躍することはできるでしょうか。ノーシード勢では最も注目の選手です。

[13]カレーノ・ブスタvsガスケは好カード。サーフェスを考えれば、クレーコーターのカレーノ・ブスタは不利に見えますが、昨年はR16まで勝ち上がっており侮れません。

SF進出争いは、本命:A.ズベレフ、対抗:チリッチイズナー、穴:カチャノフという予想です。1桁シードの3名に対抗できるノーシード勢が現れると、面白い展開となりそうです。その意味でもカチャノフには期待したいところです。

■デルポトロ山

カナダMSは直前で手首の痛みのため欠場となってしまった[3]デルポトロ。そもそもシンシナティでプレーできる状態なのかも含めて非常に心配です。全米OPも控えており、無理はしないと思いますが、長引かないことを祈っています。体調が万全であれば、現状ハードコートでデルポトロに勝てる可能性がある選手は数少ないと思いますが、果たしてどういう状況でしょうか。

そういう意味では、今シーズン安定感のある[6]アンダーソンは安心して推すことができます。カナダでもSFまでしっかりと勝ち上がっており、一昔前のベルディヒのような、安定して静かに勝ち上がっているポジションになりつつあるな、と感じています。

この2強の対抗馬として真っ先に思い浮かぶのは、やはりカナダで快進撃を見せているチチパスでしょう。今シーズンはバルセロナで衝撃の準優勝を果たし、ウィンブルドンR16、ワシントンSFと着実にステップアップしていた中、大爆発を見せました。レースランキングはカナダ決勝前の時点で11位まで上昇しており、NextGen世代の19歳ではありますが、NAFすら見えてくるところまで来ています。疲れはあるかもしれませんが、勢いで乗り切ってくれることを期待してしまいます。

そのチチパスと1回戦で対戦するのは[11]ゴファン。おそらく今大会の1回戦No.1の好カードでしょう。直近はワシントンで対戦し、チチパスが勝利しています。それにしてもゴファンはシード選手にも関わらずカナダでは初戦ラオニッチ、ここではチチパスとドロー運に見放されています…

2014年のファイナリスト、フェレールも得意の大会で一花咲かせたいところでしょう。初戦の相手は曲者ペール、2回戦はゴファンvsチチパスの勝者と厳しいドローではありますが、ベテランの復活を期待します。

[15]キリオスも状態が気になる選手の一人です。今シーズンは欠場や棄権がかなり多く、なかなか万全のコンディションで試合できていないです。ポテンシャルは高い選手なので、いっそしっかり休んで戻って来て欲しいという気持ちもありますが…昨年準優勝のこの大会で早期敗退することになると、ランキングも大きく落としてしまうことになります。初戦は強敵チョリッチが上がってくる可能性が高いですが、どうなるでしょうか。期待の若手同士の好勝負となることを期待したいです。

カナダを欠場したチョンの初戦の相手はソック。チョンのコンディションも心配ですが、レースランキング100位台後半に沈むソックも心配です。結局、今シーズンは全く復調の糸口を見つけられないままここまで来てしまいました。パリマスターズ優勝、NAFベスト4の失効が迫っており、このままだと大会のDAすら怪しくなってきます。

SF進出争いは、本命:アンダーソン、対抗:デルポトロチチパス、穴:ゴファンキリオスチョリッチという予想です。デルポトロは状態次第で本命〜欠場まであると思います。チチパスは流石にカナダの疲れを考えると本命には推しづらく、それ以外の選手にも決め手がないためやはり安定感のアンダーソンかなという予想です。

■フェデラー山

7度優勝を誇る大得意のシンシナティで[2]フェデラーに誰が対抗できるか、ということが最大のテーマとなりそうな山ですが、まず最初の候補となりそうなのは[WC]マレーでしょうか。

優勝2度、しかもいずれも決勝でジョコビッチを破っての優勝を果たしているマレーはBig4の中でもフェデラーに次いで得意の大会と言えそうです。まだまだ復帰途上の段階ではありますが、徐々にプレーは彼らしさが戻ってきており、いきなり優勝とまでは行かなくても、1試合単位で完全復活を果たす可能性は十分にある段階まで戻ってきていると思います。それがもしフェデラー戦だったら…とんでもない3回戦になることでしょう。

[8]ティエムはカナダMSでは初戦にチチパスに敗れました。今思うと若干仕方ない気もしますが、いずれにしてもポイントを積み重ねることはできず、レースランキングではアンダーソンとチリッチに抜かれて8位まで下がってしまいました。シンシナティは2年連続QF進出を果たしており、ハードコートの中では比較的相性の良い大会です。ここがNAFに向けて正念場となるかもしれません。

[12]シュワルツマンvs[WC]ワウリンカは1回戦屈指の好カード。シュワルツマンはカナダでエドムンドに圧勝するなど、チリッチに敗れてR16止まりではありましたが躍動しました。対するワウリンカもキリオス、フチョビッチをフルセットの末破り、ナダル戦も敗れはしたものの良いプレーを見せていました。好調同士の対戦に注目です。

錦織の初戦の相手はルブレフ。初対戦となります。カナダではハーセ相手に良いところなく敗戦となった錦織。シンシナティは苦手な印象もありますが、そもそもTOP10定着した2014年以降では1度しか出場していないので判断しづらい所でもあります。モンテカルロのように、突然好成績を残す可能性も秘めてはいます。今年はあまり疲労は残っていないと思われますので、上位進出を期待したい所ではあります。

SF進出争いは、本命:フェデラー、対抗:マレー、穴:ワウリンカティエム錦織、大穴:シュワルツマンと予想します。正直、他のブロックよりも本命と対抗の差は大きく、対抗と穴の差は小さいと思っています。対抗馬が爆発力はあるものの(コンディション面も含めて)現状では安定感に欠けるメンツのため、SF進出という意味ではなかなか推しにくいところがあります。

■全体

デルポトロなどの状態は心配ですが、役者が揃ってきてワクワクするドローになってきた印象です。優勝争いは、フェデラージョコビッチA.ズベレフが先頭集団、彼らを追うナダルアンダーソンチリッチ、(状態によっては)デルポトロといったところでしょうか。この他にも、ディミトロフイズナー錦織マレーワウリンカ、そしてチチパスなどもいます。消去法でなくたくさんの優勝候補者を挙げられるというのは、観ている側としては幸せなことだな、と感じます。

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