【プレビュー】2019Week32(カナダMS)

北米ハードシーズンのビッグイベントの先陣をきるカナダMS。マスターズ→マスターズ→1週挟んで→グランドスラムという、超ハードな約1ヶ月間の始まりです。

画像出典:https://www.atptour.com/en/tournaments/montreal/421/overview

モントリオール(カナダ、Masters、Hard)

この大会の特徴といえば何と言っても、会場が隔年で変わることでしょう。カナダのトロントとモントリオールで男女の大会が交互に開催される、という非常に珍しいフォーマットです。今年は男子がモントリオール、女子がトロントで開催されます。よく「隔年現象」なんていう言葉が(特に錦織の成績を語る際などに)使用されたりしますが、ここでは理論的に隔年現象が発生しうるということになります。

グランドスラムでは依然としてBIG4の3人が支配力を保ち、彼らに続く第二集団もそれなりにメンバーが固定化されている印象がありますが、マスターズでは地殻変動が起こりつつあります。それに加え、今大会はBIG4からの参戦はナダル一人。昨年のチチパス準優勝、一昨年のA.ズベレフ優勝をはじめとして、BIG4以外の上位進出もそれなりの頻度で起こっているカナダMS、ということで何か予想外の出来事が起こる気配がしています…。

※Rankingは7/29付(ワシントン、ロスカボス、キッツビュールなどは未反映)。その他データはワシントン決勝前(ロスカボス、キッツビュールは決勝まですべて反映)。

▪️ナダル山
【表1】ナダル山

今大会唯一のBIG4、かつ過去4度の優勝を誇る[1]ナダルを優勝候補筆頭に挙げることに異論を唱える人はいないでしょう。クレーではないとはいえ、基本的には自分の体との戦い、元気にプレーできるなら止めるのはかなり難しい、という状況かと思います。

そのナダルと初戦で激突が予想されるのは、デミノー。クレー・芝シーズンでは合計で僅か3勝(7敗)と苦戦しましたが、ハードに戻ってくるなりアトランタを制してバッチリ復調しました。デミノーが本調子だと、ロングマッチになる可能性が非常に高くなるのでナダルとしては嫌なドローと言えるかもしれません。

1回戦屈指の好カードとなったのは、ぺリャvs[15]ゴファン。レースランキング10位台同士の対決となりました。ハードコートということを考えると、オールラウンダーのゴファンが優勢だと思われますが、ここで爪痕を残せるようだとぺリャもここからのハードシーズン楽しみになりそうです。

[7]フォニーニもFinals出場のためにはマスターズ以上での結果が欲しいところです。初戦はWCと予選勝者の勝者、対抗シードは復帰直後の[11]チョリッチ、と正直言って恵まれたドローです。確実にシードキープの8強までは勝ち上がりたいところですが、果たして。

ナダルが大本命の山だと思いますが、ナダルが崩れた時に誰が勝ち進むのかという予想はなかなか難しいかもしれません。

【SF争い予想】

大本命:ナダル

対抗:ゴファン、フォニーニ

穴:デミノー

大穴:ぺリャ、チョリッチ

▪️チチパス山
【表2】チチパス山

準優勝経験者の上位シード、チチパスと錦織の二人がやはり中心となってくるでしょう。

まずは昨年の準優勝者[4]チチパス。ワシントンでもしっかり準決勝まで勝ち進み、依然として息切れする気配はありません。注意すべきは、好調フリッツと一発のある[Alt]フルカッチの勝者の挑戦を受ける初戦でしょうか。

一方で3年前の準優勝者[5]錦織も初戦はやや注意が必要です。昔苦手としていたガスケが勝ち上がってくると不気味です。3回戦は、[10]アグーにせよ好調シュワルツマンにせよ、比較的相性の良いオーソドックスなストローカーなので、直近負けているとはいえ戦いやすいでしょう。

【SF争い予想】

本命・対抗:錦織、チチパス

穴:シュワルツマン、アグー、フリッツ

大穴:モンフィス

▪️A.ズベレフ山
【表3】A.ズベレフ山

群雄割拠、本当に予想がむずかしく、本当に楽しみな山となりました。

前回モントリオールで開催された2年前の優勝者[3]A.ズベレフ。今年はコート外でもストレスを抱えている影響からか、なかなか乗り切れていませんが、どこで吹っ切れるでしょうか。ちょっとこればかりは予想し難いですね…。本調子ならば、今大会の優勝候補1・2番手くらいに上がってきてもおかしくない選手なのですが。

もう一人の上位シード[6]ハチャノフも今シーズンはなかなか乗り切れず。ワシントンでもツォンガに初戦敗退を喫しました。昨年SFと素晴らしい成績を残した大会で復調の兆しを掴めるでしょうか。

不安を抱える上位シードとは対象的に、[13]バシラシビリはハンブルグの2連覇を果たして乗り込んできました。地元[17]ラオニッチもだいぶ復調しつつあり、そろそろ爆発してもおかしくないかと思っています。

そして、何と言ってもノーシード勢が超豪華です。

今大会1回戦No.1の好カード、ワウリンカvsディミトロフ。昨年はウィンブルドンと全米オープンでいずれも上位シードのディミトロフがノーシードのワウリンカを初戦で引き、いずれもワウリンカが勝利するという結果となり話題を呼びましたが、またしても初戦での激突です。ディミトロフは気付けば50位台までランキングを下げ、いよいよ背水の陣となってきました。

カナダ対決となった、アリアシムvs[WC]ポスピシル。アリアシムは勝利すると2回戦でワウリンカと激突する可能性もあり、カナダテニス界の世代交代を強く印象付ける大会となるかもしれません。

A.ズベレフ、バシラシビリ側にも、優勝経験者の[WC]ツォンガ、好調のラヨビッチシュトルフなど錚々たる面々が並びます。

【SF争い予想】

本命:なし

対抗:A.ズベレフ、アリアシム、ワウリンカ、ラオニッチ、バシラシビリ

穴:ハチャノフ

大穴:ツォンガ、ディミトロフ、プイユ

▪️ティエム山
【表4】ティエム山

第2シードの[2]ティエムですが、この大会では過去5度参戦して未勝利と苦しい戦いが予想されます。しかも、初戦の相手として予想されるのは、この大会が大得意な地元シャポバロフ。ドローも厳しいと言わざるを得ません。

ワシントン決勝カードが2回戦で再戦となるかもしれません。[8]メドベーデフvsキリオスです。執筆時点ではワシントン決勝前ですが、2度の対戦が実現するとすればどのような違いが発生するのかは楽しみですね。メドベーデフは500以下では物凄い成績を残していますが、マスターズ以上ではほとんど勝てていません。厳しいドローではありますが、真価を問われる北米ハードシーズンとなるでしょう。

実力者2人[12]イズナー[14]チリッチはそれぞれ原因は異なりますが復調過程という印象が強く、ノーシード勢にも付け入る隙は十分にあるのでは。特にFinals争いにも絡んできているベレッティーニには期待したいですね。

【SF争い予想】

本命:なし

対抗:メドベーデフ、キリオス、シャポバロフ

穴:イズナー、チリッチ

大穴:ベレッティーニ、ティエム

▪️全体

優勝争い、置きに行くなら絶対[1]ナダルです。対抗は[4]チチパス[5]錦織。正直、ボトムハーフは誰が上がってくるのか全く読めません。アリアシムあたりが大爆発するのかなあ…。いずれにしても、地元勢の奮闘は大会の盛り上がりを左右する要素の一つなので、WC含めて6名(!)のカナダ勢には注目です。(こういうのを見ると、やはり日本でもマスターズ開催してほしいなあと思いますよね。今でいえば、マスターズ本戦WCを西岡ダニエル+1人くらい出せるんですよ…いいなあ。)

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