【プレビュー】2018Week32(カナダMS)

トロント(カナダ、Masters、Hard)

北米ハードシーズンのビッグイベントの先陣を切るのは、カナダマスターズです。この大会の特徴といえば何と言っても、会場が隔年で変わることでしょう。カナダのトロントとモントリオールで男女の大会が交互に開催される、という非常に珍しいフォーマットです。今年は男子がトロント、女子がモントリオールで開催されます。よく「隔年現象」なんていう言葉が(特に錦織の成績を語る際などに)使用されたりしますが、ここでは理論的に隔年現象が発生しうるということになります。

モントリオールで開催された昨年は、A.ズベレフがローマに続きマスターズ2連勝を果たしました。優勝経験者で言うと、マレー(3回)、フェデラー(2回)、ツォンガ(1回)が欠場のため、ジョコビッチ(4回)、ナダル(3回)そしてA.ズベレフの3人が参戦となります。

また、日本人では錦織杉田に加えて西岡が予選を勝ち進み本戦INしました。そもそも予選自体Altでの参戦でしたが、見事にチャンスをものにしました。思えば、昨年ブレイクした際もインディアンウェルズでLLから本戦でR16まで勝ち進んだり、チャンスを逃さずものにできる選手という印象が強いです。今回も本戦INで終わらず、さらに旋風を巻き起こしてくれる事を期待しています。

■ナダル山

優勝3回を誇る[1]ナダルですが、実はトロントで参戦したのは8年前の2010年が最後となります。8年ぶりの参戦がどのように影響するか。ナダルほどの選手ですから、上位ラウンドまで勝ち進めばアジャストしてくると思いますが、アーリーラウンドで足元をすくわれることは気を付けなければいけないかも知れません。

1回戦屈指の好カード、[WC]ワウリンカvs[16]キリオスは詳しくは書きませんが因縁があるカードです。対戦成績は2勝2敗の五分ですが、2016マドリード以来2年以上対戦がありません。そもそも2人とも身体に不安を抱えており、より万全の状態に近い方が勝利する、という展開になる可能性が高そうです。

[11]シュワルツマンvsエドムンドも好カードです。ワウリンカvsキリオスに比べれば地味かもしれませんが、レースランキング13位vs14位の対決が面白くないわけがありません。ここは2回戦がクエリーvsマナリノの勝者と、実力が伯仲して面白そうなカードが続き、個人的には注目のブロックです。

今年は安定した成績を残している[6]チリッチですが、カナダMSは参戦8回でQF1回のみと、やや苦手な印象。初戦は今年勢いに乗っているクロアチアの同胞、チョリッチとの対戦が予想され、非常に注目のカードです。一方、地元カナダの[WC]ポスピシルは同胞対決を阻止し、2013以来の上位進出を果たしたいところです。

SF進出争いは、本命:ナダル、対抗:チリッチ、穴:チョリッチエドムンドシュワルツマンという予想です。ワウリンカ、キリオスは1試合ならともかく、何試合も良いパフォーマンスを続けられるコンディションではまだ無いのでは、と予想しています。

■デルポトロ山

前週のロスカボスでは決勝でフォニーニ敗れましたが、準優勝、今シーズンは素晴らしいテニスを続けている[3]デルポトロはマスターズ2勝目を狙います。しかし、そんなデルポトロにとって序盤はタフドローの様相です。錦織ハーセシャルディーシャポバロフと、自身も含めると5名のSF進出経験者が集まり、対抗シードはロスカボス決勝で敗れた[14]フォニーニです。序盤からフルパワーで戦うことが求められます。

錦織からすると、NAF出場権のためにも、翌週が苦手なシンシナティであることからも、今週のカナダMSは是が非でも上位進出したいところです。

シャポバロフは昨年、3桁ランクながら地元カナダの期待の星としてワイルドカードで参戦し、デルポトロ・ナダルを連破するなどしてSFまで進出した思い出深い大会です。地元の大歓声を背に、再び旋風を巻起こすことができるか注目です。

[8]イズナーは比較的恵まれたドローと言えるでしょう。対抗シードはクレーコーターの[12]カレーノ・ブスタ、勢いのあるノーシードもカチャノフくらいでしょうか。もちろん油断は禁物ですが、56ドローのマスターズにしては楽なドローでしょう。奥さんの出産のため、アジアシーズンの欠場を発表しており、NAF出場のためには北米シーズンでの大量加点が不可欠です。

SF進出争いは、本命:デルポトロ、対抗:錦織イズナー、穴:シャポバロフフォニーニという予想です。2回戦でデルポトロvs錦織が実現すれば、序盤の大きな山場になるのではないでしょうか。

■アンダーソン山

3月以降、モンテカルロSFくらいしか結果を残せていない[5]ディミトロフ。ドロー運もかなり悪く、上位シードを確保しているにも関わらず序盤でラオニッチ(マドリード)、錦織(ローマ)、ベルダスコ(全仏)、ジョコビッチ(クイーンズ)、ワウリンカ(ウィンブルドン)といったメンバーに敗れており、若干同情の余地はあります。今回も決して楽なドローではありませんが、56ドローのマスターズではこんなものでしょう。ベルダスコもハードなら勝っておきたい相手です。

[10]ゴファンvsラオニッチはこれも1回戦屈指の好カード。一つ勝っても、次はティアフォーvsチェキナートの勝者ということで、56ドローマスターズならではの激戦区になりました。

ウィンブルドンで準優勝を果たし、まさに最高のシーズンを送っている[4]アンダーソンのブロックは、ランキングを見ても、直近の成績を見ても、比較的楽なブロックと言えそうです。ノーシード勢は予選勝者が多く、要注意はルブレフくらいでしょうか。怪我から復帰して間もないルブレフですが、前週はワシントンでSFまで勝ち進み、状態を取り戻しつつあります。

対抗シードの[15]バウティスタ・アグーはウィンブルドン欠場→クレーのグシュタードで準優勝。ややコンディションが読みにくい状況ではありますが、安定感がある一方で大番狂わせも少ない選手なので、アンダーソンが本調子であれば勝てる可能性は高いでしょう。

SF進出争いは、本命:アンダーソン、対抗:ラオニッチディミトロフ、穴:ゴファンチェキナートという予想です。本当はラオニッチをもう少し推したいのですが、ドローの厳しさを考えるとアンダーソンの方が有利と見ています。

■A.ズベレフ山

カナダMSで一度も勝ったことがない[7]ティエム。現時点でレースランキング6位ではありますが、場合によってはNAF出場権も危うい、ということは以前記事にも書いた通りです。

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初戦敗退となったウィンブルドンの後も、クレーの大会にも関わらずハンブルグQF、グシュタード初戦負けと結果を残せず、深刻な状況になりつつあります。そんな空気を一掃するためにも勝ち進みたいところですが、いきなり初戦がジュメールvsチチパスの勝者というのは厳しいドローです。特にチチパスはワシントンでもゴファンを破るなど、シード勢を倒せるだけの力を十分付けてきています。

[9]ジョコビッチvsチョンも好カードの一つです。前回の対戦は今年の全豪オープン、チョンが衝撃的なストレート勝ちを納めた試合でした。ただ、現時点のコンディションだとジョコビッチが圧倒的有利でしょう。プレースタイルが似ているため、どちらの精度が上か、という対決になる可能性が高いですが、完全復調と言ってもいいジョコビッチに付け入る隙はほとんどなさそうです。

[2]A.ズベレフはジョコビッチとの対戦が予想されるQFまでは楽なドローでしょう。対抗シードは今期絶不調の[13]ソック。ベテランのフェレールが本調子なら怖い存在でしょうが、今のA.ズベレフを倒すことを求めるのは流石に酷でしょう。上位陣ではプイユもいますが、今年はマスターズ以上で全く活躍できておらず、こちらもA.ズベレフの対抗となるのは難しいでしょうか。

このブロックで個人的に注目しているのは[WC]アリアシムです。若干17歳(8/8に18歳になります)の若武者ですが、昨年のシャポバロフよろしく、ワイルドカードから上位進出、なんていうシナリオもあるかもしれません。

SF進出争いは、本命:ジョコビッチ、対抗:A.ズベレフ、穴:チチパスティエム、大穴:アリアシムと予想します。正直、ジョコビッチvsA.ズベレフの一騎討ちかなと思っています。現状、ハードコートではこの2人が一番強いと思っているので、直接対決を非常に楽しみにしています。

■全体

個人的には、[9]ジョコビッチvs[2]A.ズベレフの勝者が優勝すると予想しています。トップハーフは[3]デルポトロvs錦織の勝者が決勝進出するという予想です。錦織への贔屓目が入ってしまっているとは思いますが…

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