【シーズンレビュー】2018芝シーズン振返り(Week24〜28)

はじめに

「芝シーズン」の定義は難しいのですが、ここでは「芝シーズン」と「芝大会」という用語を下の定義で使用します。

芝シーズン:Week24〜28(全仏翌週〜ウィンブルドン)

芝大会:芝コートで開催される250以上の8大会、チャレンジャーの3大会

※「芝大会」には、上記「芝シーズン」の期間外であるWeek23 Surbiton CH、Week29 Newportを含む。

2018芝大会の結果まとめ

2018芝大会上位進出者まとめ
2018芝大会獲得ポイントTOP30

まずは「芝大会」の成績を振り返ってみましょう。

今シーズンは芝の全11大会で優勝者が全て異なる、という結果になりました。特に、Week26までの前哨戦の上位進出者が軒並みウィンブルドンでは早々に姿を消し、前哨戦ファイナリスト→ウィンブルドンQF以上はフェデラーとジョコビッチのみでした。前哨戦とは何なのか…という感じですね。

1位はもちろん、ウィンブルドン優勝で完全復活を果たしたジョコビッチです。ハイライトは、ウィンブルドンSFのナダル戦。ここ数年の中でも最高の名勝負の一つでしょう。あの試合を観て、「BIG4」の恐ろしさを改めて痛感しました。

2位はウィンブルドン準優勝のアンダーソン。自身2度目のグランドスラム準優勝です。昨年の全米OPで準優勝した際には、決勝までTOP10との対戦が無かったこともあり、「棚ボタだ」なんて言われ方を結構されていましたが、今回はアーリーラウンドでセッピ→コールシュライバー→モンフィスと厳しめの相手を撃破し、フェデラーを2セットダウンから捲り、イズナーにはファイナル26-24というデスマッチを制して堂々と決勝に進出しました。現役で複数回グランドスラム決勝に進出しているのは、現役ではBIG4、ワウリンカ、チリッチにつぐ快挙です。ランキングも遂に5位まで上がり、まさにトッププレイヤーとしての地位を確立してきています。

3位はフェデラー。随所で良いプレーを見せてはいましたが、最後はややお疲れだった印象です。感覚がおかしくなってきていますが、この8月には37歳となる選手です。クレーを全スキップしましたが、得意の芝シーズンも例えばハレとウィンブルドンのみという様に、もう少し絞っても良いのかもしれません。やはり、万全の状態でプレーしているところをたくさん見たいですよね。

4位は前哨戦に出場せず、ぶっつけ本番のウィンブルドンでSFまで進出したナダルイズナー。ナダルは2011年以来、7年ぶりにQF以上まで勝ち進みました。最後はジョコビッチとの名勝負の末に敗れはしましたが、久しぶりに芝の上でも強いナダルを見せつけることは十分にできたと思います。イズナーは典型的なビッグサーバーということで芝に強いイメージがあったのですが、意外とウィンブルドンでは良い結果を残したことがなく、R16まで進出したのも今回が初めてでした。勢いそのままに、グランドスラム初のSFまで勝ち進みましたが、イズナーもすでに33歳。アンダーソンなんかもそうですが、最近、30歳を超えてからがキャリアハイとなる選手が増えてきていますね。

6位のラオニッチは怪我と付き合いながらのシーズンとなっていますが、芝だけで500pt以上稼いでいるのはさすが。ただ、早めに復帰してどこか痛めて…というパターンが続いている印象もあるので、身体の状態は引き続き心配です。

7位、8位はチリッチチョリッチのクロアチアコンビ。ウィンブルドンでは早期敗退してしまいましたが、前哨戦の500でそれぞれジョコビッチ、フェデラーを破って優勝を果たしました。この二人を擁しながら、クロアチアはデ杯準決勝はホームでクレーコートを選択していたので不思議に思っていたのですが、よく見たら相手が米国なのですね。イズナー、クエリーをはじめとして、米国は芝や高速ハードが得意な選手が多い一方、チリッチチョリッチは比較的どんなコートでもプレーできるので、この判断は賢明な気がします。結果がどうなるかはわかりませんが。

9位、10位はマナリノシャルディーのフランスコンビ。マナリノはすっかり芝でのカウンターテニスが定着してきました。シャルディーもサービトンCH、スヘルトーヘンボス、クイーンズと好成績を残し、ランキングを一気に約40も上げてきました。フランスは本当に多彩な才能が花咲きますね。

以下、気になった選手何人かについて。

15位にはボスニア・ヘルツェゴビナのジュメール。アンタルヤで優勝を果たしました。9月にデ杯入れ替え戦で日本が戦うことになるので、ボスニア・ヘルツェゴビナのジュメール、バシッチの動向は気になってしまいます。

16位には若手のホープ、19歳のデミノー。今年の年初、ブリスベン、シドニーでの大活躍で一躍有名になった選手ですが、チャレンジャー2大会だけでなく、ウィンブルドンでしっかりと結果を残したことが非常にポジティブなことだと思います。

19位にはクレーコートで躍動したチチパス。ウィンブルドン16強で、いよいよ32位まで上げてきました。TOP30入りは時間の問題でしょう。全サーフェスで結果を残せているのが素晴らしいです。

芝シーズン前後でのランク・ポイント変動まとめ

2018芝シーズン ランク変動・ポイント変動TOP30

※芝シーズン前後少なくとも一方で150位以内の選手を対象とした。

この芝シーズンで躍進した選手リストです。

個人的に一番印象的だったのは、錦織と全仏OP R16で対戦したグルビスです。錦織と同じ「Young Guns」の一員で、元TOP10プレイヤーです。2014全仏で他のYoung Gunsに先駆けてグランドスラムSF進出を果たし、ここからウィンブルドンでディミトロフ、ラオニッチのSF、全米で錦織のFとYoung Guns躍進の流れを作った選手でもあります。怪我などの影響で長らくTOPからは離れていましたが、遂に復活を果たしました。まだランキングは3桁ですが、錦織戦の途中膝を痛めるまでのようなプレーができるのであれば、すぐにTOP30〜50くらいまでは戻ってくるでしょう。

期待の若手という意味では、現時点で18歳以下最上位のアリアシム。全然芝コートは関係ないですが、6月以降だけでクレーのCHで優勝1回、準優勝1回、4強1回。その後、ウマグ、グシュタードと250の大会でも初戦突破を果たしています。シャポバロフとともに、カナダの未来を背負っていくべき才能です。

23歳のマクドナルドはウィンブルドン16強で初めてTOP100入りを果たしました。米国にはティアフォー、フリッツ、ドナルドソンなどもっと若いプレイヤーが出てきており、彼としても負けられないところでしょう。

そのティアフォーは、昨年1勝しか挙げられなかった芝シーズンで180ptを稼ぎ、TOP50入りを果たしました。今まで一番結果が出ていなかったサーフェスで安定したプレーができたことはポジティブな材料でしょう。

2018芝シーズン ランク変動・ポイント変動WORST30

※芝シーズン前後少なくとも一方で150位以内の選手を対象とした。

当然、上昇する選手がいれば下落する選手もいます。

ヤングはこの期間に予選での1勝しか挙げることが出来ず、遂に200位台までランキングを下げてしまいました。彼も「Young Guns」の一員です。グルビス復活と時を同じくしてヤングが窮地に陥ってしまっているのは、複雑な気持ちになります。

今シーズン限りの引退を表明した芝巧者のミュラーも大きくランクを落としてしまいました。昨年がキャリアハイのシーズンだっただけに、たった1年でこうも大きく状況が変わってしまうことに驚きを隠せません。

ベルディヒは2005年10月以来のTOP50圏外となってしまいました。ただ、この間はずっと約13年に渡ってTOP30を維持し続けており、改めて彼の安定感の凄さを感じます。すでに全米までの欠場を表明していますが、いつ復活できるのか非常に心配です。

F.ロペスは大きく順位を下げてしまいましたが、敗れた相手はキリオス、キリオス、デルポトロとある程度やむを得ない部分もあります。ゴファン、シモンには勝利しており、36歳の大ベテランではありますが、まだまだ巻き返しに期待できると思います。

杉田はハレでティエムを破るなど復調の兆しはありましたが、昨年アンタルヤ優勝の失効を守ることが出来ず、ランクダウンとなりました。この後もシンシナティ、東京など失効点が大きい大会が続きます。1年前のような自信満々のプレーが復活することを期待しています。

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