【シーズンレビュー】2018アジア・欧州シーズン振返り(Week37〜44)

テニスシーズンも終盤戦、アジア・欧州シーズンの結果まとめです。

例のごとく、アジア・欧州シーズンという用語は一般的なものではなく、造語です。再掲ですが、1年間を次の6つのシーズンに区分しています。

・全豪シーズン:シーズン開幕〜全豪OP

・サンシャインシーズン:全豪OP後〜マイアミMS

・クレーシーズン:マイアミMS後〜全仏OP

・芝シーズン:全仏OP後〜ウィンブルドン

・全米OPシーズン:ウィンブルドン後〜全米OP

・アジア・欧州シーズン:全米OP後〜パリMS

なお、ATP Finalsは非常に限られた選手しか出場できず、ボーナスステージ的な印象が強いので上記6シーズンとは別で考えています。

アジア・欧州シーズンの特徴は以下のような感じでしょうか。

・全てのツアーレベルの大会がハードコートで開催される。

・特に欧州の大会を中心に、インドアコートで開催される大会が多い。

ATP Finalsに向けて、最後の追い込みをかけてくる選手が出てくる。

・一方、疲労が蓄積し、怪我で欠場する選手も増えてくる。

では、アジア・欧州シーズン、Week37〜44の結果を見ていきましょう。

2018アジア・欧州シーズンの結果まとめ

2018アジア・欧州シーズン上位進出者まとめ
2018アジア・欧州シーズン獲得ポイントTOP30※集計対象はツアーレベルの大会のみ。

ハードコートの大会が続くアジア・欧州シーズンを制したのは、ランキングも1位に返り咲いた精密機械ジョコビッチです。マスターズ2大会にしか出場しなかったにも関わらず、優勝と準優勝で1600ptを稼ぎました。ウィンブルドン〜パリで驚異の31勝2敗、彼を止めることは本当に至難の技となっています。

そんなジョコビッチをパリ決勝で破ったハチャノフがアジア・欧州シーズン2位に輝きました。2016年に成都でツアー初優勝を果たすなど20歳にして50位前後まで駆け上がったものの、2017年はなかなか壁を破れず45位でのフィニッシュということで若干伸び悩んでいた印象もあったハチャノフでしたが、ついに今年壁をぶち破ってくれました。アジア・欧州シーズンでは唯一の複数優勝、しかもマスターズ初優勝とかなりメモリアルな偉業です。しかもパリ決勝の相手は無敵にも思えたジョコビッチということで、まさに世界を驚かせたと言って良いでしょう。11位スタートで臨む来シーズンはさらなる活躍が期待されます。

3位には大ベテランのフェデラー。出場した3大会すべてで当たり前のように上位進出するあたりは流石の一言です。特にパリSFはジョコビッチに敗れはしたものの3時間を超えるフルセットの激闘を見せ、フェデラー健在という印象を強く植え付けてくれました。

4位には錦織。優勝こそなかったものの、好成績の大会を積み重ね、何とかレースランキング9位に滑り込みました。特に楽天オープンのチチパス戦、ガスケ戦、ウィーンのハチャノフ戦、ティエム戦あたりは試合を完全に支配し、ピーク時並の強さを見せつけていました。一方で、これが一大会を通して維持できていない面があったということは来年に向けた課題となるでしょうが、そうは言ってもこの期間中だけで19試合もこなして怪我によるリタイアが無いという事実は、怪我に苦しめられてきた錦織にとっては明るいニュースの一つと言って良いでしょう。

その錦織を楽天オープン決勝で破ったメドベーデフが5位。楽天オープンでは予選から合計7試合を戦っての優勝となりました。同じ1996年生まれ、同じロシアのハチャノフと今後のツアーを引っ張っていくべき存在と言えるでしょう。

6位のアンダーソンは流石の安定感を見せました。ウィーン決勝では錦織を破って優勝。パリではリベンジを許しましたが、ツアーファイナルでは圧倒的な内容で完勝。もしかすると新たなライバル対決の誕生かもしれません。

7位には上海で決勝まで勝ち進んだチョリッチがランクイン。上海の直前は深圳と北京で連続初戦敗退と不調なのかと思いきや、上海でワウリンカ、デルポトロ(途中リタイア)、フェデラーを破り堂々と決勝まで勝ち進みました。

8位にはA.ズベレフ。完全にお疲れモードの印象がありましたが、それでもこの位置というのはさすがと言えるでしょう。とはいえ、マスターズ2大会では負けた相手はともかく(上海ジョコビッチ、パリハチャノフといずれも優勝者)、敗れた試合はいずれも3ゲームしか取れずに完敗。内容は少し残念と言えるものでしょう。と思っていたらATP Finalsで難攻不落のジョコビッチを倒して優勝。彼の調子はよく分かりません(笑)

9位にはティエム。苦手なはずのこの季節によく頑張りました。パリではSF、そしてサンクトペテルブルクでの優勝と、猛追する錦織を振り切って自力でレースランキング8位を掴み取りました。ハードコートでもこれだけのプレーを継続できるのであれば、さらなる上位ランクも見えてくるでしょう。

10位にはアントワープを制したエドムンド。今年は全豪SFから始まり、調子のアップダウンが激しいシーズンでしたが、最終盤のアジア・欧州シーズンで再び復調することができました。来シーズンはいきなり全豪SFの失効が待っており、正念場が訪れます。

11位には北京を制したバシラシビリ。自身初優勝となったハンブルグに続き、今期2勝目とも500の大会となりました。500ではこの優勝2回を除くとQF以上に進出したことは無し。逆に250ではF2回、SF3回、QF4回だが優勝は無し。なかなか不思議な巡り合わせです。

13位にはチチパス。見事ストックホルムを制し、さらにポイントこそ入らないものの、NextGen Finalsも全勝で制しました。今年の年末ランキングでは11位ハチャノフ、12位チョリッチ、14位エドムンド、15位チチパス、16位メドベーデフと今後のツアーを背負っていくべき20歳過ぎの選手たちが並んでいますが、彼ら5人のうちハチャノフを除く4人がこの期間に優勝し、ハチャノフもマスターズで準優勝と大活躍を見せて上位にランクインしました。まさに彼ら5人がツアーの中で注目を集めた1年間を象徴するかのような期間になったと思います。

NextGen Finals出場権を有する世代では、シャポバロフが22位、デミノーが29位にランクインしました。2016ウィンブルドンジュニア決勝カードの2人ですね。シャポバロフは楽天オープンで生観戦しましたが、本当に惚れ惚れするような美しい片手バックハンドでした。「華がある」というのは一種の才能なので、彼のような華がある選手が活躍するとツアー全体も盛り上がるのだと思います。デミノーはトップレベルまではもう少し時間がかかるかと思って見ていましたが、一気にブレイク。31位までたどり着きました。凱旋試合となる全豪オープンでは地元ファンの大声援を浴びてどこまで勝ち進めるか楽しみです。

そして日本勢では何と言っても西岡がツアー初優勝を飾り24位にランクイン。また、チャレンジャーでもTraralgon CHでF、キャンベラCHでSF、神戸CHでSFとかなりのポイントを稼いでいます。彼も錦織と同様に怪我明けのシーズンだったとは思えない活躍です。

 

アジア・欧州シーズン前後でのランク・ポイント上昇まとめ

2018アジア・欧州シーズン ランク上昇・ポイント上昇TOP30

※アジア・欧州シーズン後200位以内の選手を対象とした。

ランクアップ1位に輝いたのはイタリアの若手Baldi。今年チャレンジャーレベルに定着した選手ですが、見事にチャレンジャー大会初優勝を果たしました。優勝したのはインドアカーペットという非常に珍しい環境の大会ですが、WCとして出場したローマMS予選ではフチョビッチとガルシアロペスを破って本戦進出するなどクレーで結果を残しており、来年のクレーシーズンでは台風の目になるかもしれません。

西岡は90ランクアップ、339ポイントアップでランクアップは4位、ポイントアップ8位と素晴らしい成績を残しました。

かつて錦織らとともにYoung Gunsの一員だったグルビスは、ストックホルムで予選から参戦して約4年ぶりのツアーレベル決勝進出を果たすなど、ランクアップ7位(+53ランク)、ポイントアップ17位(+220pt)で見事TOP100返り咲きを果たしました。30代でも輝く選手が増えている中、まだ老け込む歳ではありません。もう一度どこまで輝くことができるか、ツアー本戦から出場する機会も増える来シーズンが楽しみです。

トミッチも成都で予選から計7試合を戦い抜いて優勝し、TOP100復帰を果たしました。色々と騒動も巻き起こした選手ではありますが、その才能には疑う余地がありません。2桁ランク後半で満足すべき選手ではないでしょう。是非早くトップレベルまで戻って来てほしいものです。

若手では10代のPopyrinKecmanovicMollekerアリアシムといった面々がランクインしました。来年、再来年あたりのNextGen Finalsに名を連ねるのは誰なのか、非常に楽しみです。

タイトルとURLをコピーしました