【プレビュー】2018Week28(ウィンブルドン2週目)

R16以降のドロー

1〜8シード:4名、9〜16シード:3名、17〜24シード:2名、25〜32シード:1名、ノーシード:6名(うち予選勝者1名)という勝ち残りとなりました。トップシード8人中わずか4人しか勝ち上がれないという、全体的にアップセットの多い大会となりました。かなりタフドローだったディミトロフ、アクシデントで棄権となったティエムはまだしも、フェデラーに次いで優勝候補にも挙げられていたチリッチ、A.ズベレフの敗退は衝撃的だったのでは無いでしょうか。

勝ち残り選手の各種データ

勝ち上がりのデータを見てみると、オールストレート勝ちは芝の王者[1]フェデラーを除くと、[2]ナダル[5]デルポトロ。前哨戦出場せず、どのようなコンディションで大会に臨むのか多少不安視もされていた二人ですが、始まってみれば圧巻の強さを見せつけました。2人とも本人比では芝がそこまで得意では無い(十分強いが)という選手でしたが、今大会の好調ぶりを見るに、2週目も期待できそうです。勝ち進むと、QFでぶつかることになります。仮に実現すれば、非常に楽しみなカードです。

一方、予選勝者の[Q]グルビスはオールフルセットの15セット、ノーシードのカチャノフは14セットをここまで戦っています。次は、[12]ジョコビッチ、[24]錦織と比較的ここまで試合が長引いていない相手との対戦となり、二人とも体力がどこまで持つかという点は不安ではありますが、2週目は完全に挑戦者。力の限り、走り切って欲しいものです。特に、グルビスの復活は個人的には非常に感慨深いです。キャリアハイ10位、錦織の1歳上で「Young Guns」の一員に名を連ねており、錦織との対戦回数は少ないですが、ライバルの一人として記憶していました。私の下のツイートが(当人比で)反響を呼んだのも、グルビスの復活を喜んでいるテニスファンが多い証拠でしょう。

優勝候補筆頭、[1]フェデラーは前哨戦優勝者で唯一ここまで勝ち進みました。ガスケ(スヘルトーヘンボス )、チリッチ(クイーンズクラブ)、チョリッチ(ハレ)、ジュメール(アンタルヤ)、M.ズベレフ(イーストボーン)と次々と敗退する中、フェデラーには前哨戦優勝者の呪いは少なくともここまでは効果がなかったようです。

そのフェデラーとR16で対戦するのが、芝で強さを見せている[22]マナリノです。前哨戦ではアンタルヤで2年連続準優勝に終わり、ツアー決勝の連敗記録を5に伸ばしてしまいました。その悔しさをぶつけるように、自身最高タイ、3度目の16強です。フェデラー相手に持ち前の守備力を発揮し、長期戦に持ち込むことができれば、勝機も見えてくるかもしれません。

マナリノ同様、前哨戦準優勝からの勝ち残り、2016ウィンブルドンファイナリストの[13]ラオニッチとウィンブルドン3度の優勝を誇る[12]ジョコビッチ

ラオニッチはシュトゥットガルト準優勝後にクイーンズクラブで棄権して心配されていましたが、ここまでは元気な様子を見せています。依然レースランキング20位台のラオニッチとしては、ツアーファイナルのためにはここでの大量加点が必要不可欠です。勝ち残っている中では、Big4の3人に次ぐウィンブルドンでの実績を持っているだけに、身体の調子がこのまま問題なければ大きな期待を抱いてしまいます。

ジョコビッチはR32で地元エドムンド相手に完全アウェイの雰囲気となり、多少ナーバスになる場面もありましたが、完全復活と言ってもいいパフォーマンスです。実は今年のグランドスラム3大会全てでR16以上の成績を残しているのは、ナダルとジョコビッチだけです。今シーズン序盤は酷い状態だったイメージですが、やはり大舞台ではしっかり最低限の成績を残しているのは流石です。

今シーズンは安定した戦いを続けており、一皮向けた感もある[8]アンダーソン[9]イズナーもここまで勝ち上がりました。

アンダーソンは今シーズン対TOP10未勝利という点が若干物足りなく感じるものの、苦手なクレーコートで自身初のマスターズSFを果たし、ローボールの処理等の問題からサーブが強いにも関わらずあまり得意としてこなかった芝でもきっちりR16まで勝ち上がってきました。全米以外では一度も超えたことのないR16の壁に加え、次の相手は過去5戦5敗と相性の悪いモンフィスです。次の試合が様々な過去のデータを覆す、彼のキャリアにとって大切な一勝となるか、注目です。

ビッグサーバーのイズナーはウィンブルドンに強そうな印象がありますが、実は初めてのR16進出です。芝で3つもタイトルを取っているのにもかかわらず、意外なデータです。こういうジンクスめいたものが破れた時、一気に大きな結果に繋がることが多いイメージがありますが、今大会はどうなるのでしょうか。

[24]錦織は強敵キリオスを倒して自身最高タイのR16まで駒を進めました。今大会は非常にサーブの調子が良く、グランドスラムで唯一QF以上の成績が無いウィンブルドンで結果を残す時が来たのではないでしょうか。R16の相手は同じ「Young Guns」のグルビス。色々な意味で、大一番にふさわしい相手ではないかと思います。さらに言うと、QFに勝ち進むとジョコビッチが待ち受けている可能性が高いです。芝コートでジョコビッチに勝つことは非常に難しいかもしれませんが、何としても対ジョコビッチの連敗を止めて欲しいという強い想いがあります。

本来、芝コートが得意でなかったモンフィスは自身初のR16まで勝ち進みました。ガスケ、クエリーという芝が得意な実力者を下しての勝ち上がりは、本物と見て良いのではないでしょうか。相性の良いアンダーソンに勝つことができると、現存するグランドスラム+マスターズ計13大会全てでのQF以上を達成できます。

同じフランス勢のシモンは前哨戦では全く結果が残せませんでしたが、本番ではしっかりとここまで勝ち残りました。3勝4敗と肉薄しているデルポトロ相手に自分のペースでテニスができるかが焦点となるでしょう。ちなみに全仏2週目の際に、フランス勢が誰も16強に残れなかった、という記事を書きましたが、その鬱憤を晴らすかのように、ここウィンブルドンでは3名が16強に名乗りを上げました。(その際の記事は下記参照)

【プレビュー】2018Week23(全仏OP2週目)
本当は全仏OP開幕前にプレビュー記事を書きたかったのですが、ドロー〜開幕の間に書く時間が無かったので、キリの良いこのタイミングで書こうと思います。 R16以降のドロー 1〜8シード:7名、9〜16シード:2名、17〜24シード:3名、25...

バルセロナ準優勝などクレーシーズンを騒がせた[31]チチパスはここでも結果を残しました。今年の全仏でグランドスラム初の初戦突破を果たしたばかりとは思えない、堂々とした勝ち上がりです。しかし、まだ10代とはいえ、彼も今回はシード選手。番狂わせというのはかえって失礼でしょう。つくづく、NextGenも層が厚くなって来たな、と感じます。

今大会のサプライズの一人、マクドナルドはウィンブルドン本戦初挑戦でR16まで勝ち上がりました。初のTOP100入りを確定させるばかりか、暫定80位までランキングを上げる見通しとなっています。若いイメージがありましたが、もう23歳。もちろんここからブレイクした選手はたくさんいますが、下の世代の台頭もかなり気になってくる年齢でしょう。R16で満足せず、このチャンスをさらに活かすことができるでしょうか。

べゼリーも今大会のサプライズの一人。シュワルツマン、フォニーニとシード選手2名を連続で破ってのR16進出です。それにしても、シュワルツマン→フォニーニ→ナダルってもしクレーコートだったら本当にとんでもない鬼ドローですね。

以上16名での2週目の戦いとなります。ウィンブルドンQF以上経験者はフェデラー、ジョコビッチ、ナダル、ラオニッチ、デルポトロ、シモンの6名しかいないという顔ぶれで、モンフィスvsアンダーソン、イズナーvsチチパス、錦織vsグルビスはどちらが勝っても初のQFとなります。

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