【プレビュー】2018Week26(アンタルヤ、イーストボーン)

Week25(ハレ、クイーンズ)の振り返り

執筆時点ではまだ決勝が終わっていませんが、ハレは[1]フェデラーvsチョリッチ、クイーンズは[1]チリッチvs[WC]ジョコビッチという決勝カードとなりました。簡単に振り返ってみましょう。

■ハレ(ドイツ、ATP500、Grass)

ドロー表→Halle draw

何と言っても、チョリッチの決勝進出と[Q]クドラのSF進出が最大のニュースでしょうか。

チョリッチは1回戦で疲労の影響か元気のない[2]A.ズベレフを一蹴すると、勢いそのままに決勝まで勝ち上がりました。準決勝は[4]バウティスタ・アグーが転倒による怪我のため棄権勝ちという形とはなりましたが、大会を通じて良いプレーを見せているチョリッチの決勝進出の価値が落ちることはないでしょう。500以上の大会では自身初の決勝進出、芝の大会でも自身初の決勝進出、キャリアハイ更新の26位以上確定、と彼のキャリアにとっても大きな大会となりました。決勝の相手は、調子が良くないながらも要所を抑えて勝ち進んできた王者[1]フェデラー。ここまでの調子を見る限り、十分チャンスはあるはずです。

[Q]クドラはかつてウィンブルドンで16強に入ったことがあるなど、芝に強い選手ではありますが、予選からSFまで勝ち上がってきたのは大きなサプライズでした。シード選手とは当たっていないものの、チチパス杉田といったあたりをストレートでねじ伏せたのはお見事です。調子の良さを差し引いても、芝の上ではTOP30くらいの実力はあるとみて良いのではないでしょうか。ウィンブルドンも楽しみです。

[7]錦織カチャノフに完敗。カチャノフがとんでもなく良かった、というわけでも無く、完全に錦織側の問題だった印象です。フットワークもショットも、一つ一つの動作が恐る恐るという感じで、軽やかさやキレが皆無でした。3年連続怪我をしている大会を無事に終えた、ということだけが評価できるポイントでしょうか。

杉田[3]ティエムを破る大金星。やはり芝の上で輝く選手です。ただ、ティエム戦は素晴らしいプレーだったものの、クドラ戦はやや自滅という印象もある敗戦となってしまいました。クドラも悪くはなかったですが、チャンスはあったと思います。得意の芝で、もっともっと輝いて欲しいです。

■ロンドン/クイーンズクラブ(イギリス、ATP500、Grass)

ドロー表→Queen’s Club draw

決勝は[1]チリッチvs[WC]ジョコビッチという、ある意味順当とも言えるカードとなりました。ジョコビッチは全盛期並とは言いませんが、もう完全復活と言って良いのではないのでしょうか。

復帰組では、キリオスが同じく復帰組の[WC]マレーを破り、SFまで勝ち進みました。マレー戦以外では一つもブレークを許すことなく、4試合で7度のタイブレークを戦いました。プレーを見る限りは、身体の調子はあまり問題なさそうです。そのキリオスに1回戦で敗れたマレーですが、プレーは復帰戦にしては全く悪くありませんでした。これは想像以上に早く状態を戻してくるかもしれません。ウィンブルドンにも期待が膨らんできました。

[SE]シャルディーはスヘルトーヘンボス準優勝に続き、今週もSFまで勝ち進みました。その前週もサービトンCHで優勝しており、芝シーズンに入ってからすでに440ptを稼いでいます。ウィンブルドンでも台風の目となる可能性大です。

一方で、[WC]ワウリンカ[5]クエリーに敗れ2回戦敗退。厳しい相手とはいえ、なかなか完全復活とは行きません。絶不調の[6]ソック[8]ベルディヒも初戦敗退。トンネルから未だ抜け出せずにいます。

アンタルヤ(トルコ、ATP250、Grass)

2017年より始まった大会で、昨年は杉田祐一が初代王者に輝きました。昨年はシード選手がベルダスコの1勝のみ、7人が初戦敗退という大荒れの大会となり、決勝では杉田マナリノを破り、自身ツアー初優勝を飾りました。今年は杉田もマナリノもシードです。決勝が同じカードになったとしても、今度は大番狂わせとは言われないでしょう。

詳しいドローはこちらをご覧下さい。→Antalya draw

■マナリノ山

第1シードは昨年準優勝の[1]マナリノ。昨年同時期は62位だった順位を26位まで上げてきた。クレーが苦手なこともあり、一時期はかなり負けが込んでいたが、前週のクイーンズではエバンス、ベネトーを破ってQF進出。得意の芝で巻き返しの準備は整ったか。第1シードで臨む今大会で、悲願のキャリア初優勝を決めたいところ。

対抗シードの[6]ソウザは芝が苦手。昨年は芝で1勝も挙げることができず、2016ウィンブルドン以来6連敗中、TOP100相手に限ると2015ノッティンガムでグロースに勝って以来、9連敗中、ということで苦戦が予想される。むしろ、芝が得意なマイヤーの方がQFまで勝ち進む本命か。

■モンフィス山

芝がそこまで得意ではない[4]モンフィスの初戦は予選勝者vs芝が得意なバグダティスの勝者。モンフィスは通算34W-23L、バグダティスは通算53W-36Lと芝での成績は完全に拮抗している。

逆サイドはガルシア・ロペスvs予選勝者と予選勝者vs[5]ハーセ。ガルシア・ロペスもハーセもそこまで芝が得意ではない。

こう組合せを見ると、昨年4強のバグダティスが昨年の再現をしたとしても全く不思議ではないか。ただし、予選勝者が3枠あり、芝が得意なユージニーなどが入る可能性もあるため、誰がどこに入るかも注目である。

■ベルダスコ山

芝は意外と苦手ではない[3/WC]ベルダスコだが、今シーズンは2大会で1勝のみ。クイーンズでは1回戦がチリッチというタフドローだったという要素もあるが、ウィンブルドンに向けて少し不安が残る内容ではある。今大会は比較的悪くないドローと思われる。ここで一つ結果を残しておきたい。初戦の相手はべゼリーvsトンプソンの勝者だが、2016ウィンブルドン16強と芝で結果を残しているべゼリーが有利か。

逆サイドの[8]ラジョビッチは今年もクレーシーズンでは活躍したものの、芝が得意ではない。ノーシード勢も含めて芝巧者不在の中、全員にチャンスがあるか。

■ジュメール山

芝での実績という意味では、昨年王者の[7]杉田がこの中では一番か。QFで[2]ジュメールと対戦することになれば、デビスカップの前哨戦としても興味が沸くカードとなる。杉田としては、得意の芝では絶対に負けられない。

ノーシード勢では、芝ということを考えればエルベールコピルあたりに注目か。エルベールはダブルスでウィンブルドン優勝したこともある実力者。シングルスではウィンブルドン3回戦が芝での最高成績だが、油断できる相手ではない。コピルはスヘルトーヘンボスで杉田に勝利している。昨年はCHで2度SF進出するなど、芝を得意にしている選手であり、上位進出も十分あり得る。

■全体

優勝争いの絶対的存在は不在で、強いて言えば昨年決勝カードのマナリノ杉田は優勝候補と言えるか。ノーシード勢で台風の目となるのは、マイヤーコピルと予想。

イーストボーン(イギリス、ATP250、Grass)

元々、同じイギリスのノッティンガムで開催されていましたが、2009〜2014はイーストボーン、2015〜2016はノッティンガム、2017〜またイーストボーンに戻った大会です。ちなみにノッティンガムの方は2017年からはチャレンジャーの大会となっており、今年はオーストラリア期待の若手、デミノーが優勝しています。

昨年はジョコビッチがWCで参戦すると全試合ストレートで優勝しましたが、今年もマレーワウリンカとビッグネームがWC参戦しています。そしてこの両者がなんと1回戦で対戦することになりました。

詳しいドローはこちらをご覧下さい。→Eastbourne draw

■シュワルツマン山

第1シードはキャリアハイの11位までランキングを上げてきた[1]シュワルツマン。芝では通算0W-6Lと一度も勝ったことがないが、初勝利を果たすことはできるのか。初戦の相手はトリッキーなプレーをするラッコと予選勝者の勝者。一つ一つ重ねてきた実績を自信に変え、芝でも勝つ方法を見つけることができるか、ウィンブルドンを見据えて大事な大会となりそうだ。

[8]フチョビッチ[WC]ノーリエハリソンは前週1回戦でそれぞれコールシュライバー、ワウリンカ、エドムンドと実力者の前に屈した。誰がウィンブルドンに良いイメージで臨めるか、一試合でも多く戦いたい。

本命不在の山を勝ち上がった選手が、ウィンブルドンでも台風の目となる可能性がある。

■チェキナート山

ブダペスト優勝、全仏SFとクレーシーズン最大のサプライズを見せた[4]チェキナートだが、ツアーレベルでは17/17勝、チャレンジャーでは156/159勝をクレーコートで挙げている、これ以上ないくらいのクレーコーター。ほぼクレーだけでTOP30まで入ってしまうのはすごいが、芝・ハードでも戦えないとここから上に行くのは難しい。ここからが彼にとって正念場である。初戦はいずれも芝が得意なセッピvsイストミンの勝者と厳しいドロー。

逆サイドは混沌。普通なら芝巧者として有名なミュラーが本命と言いたいが、今シーズンは2大会で1勝と苦戦。彼が本調子でないならば、ハレ予選でマウー、コピルと強敵を破っているミルマン、クイーンズでアンダーソンを破った[5]マイエル、ウィンブルドンでQFに進出したこともあるシモンにもチャンスが出てくる。

■シャポバロフ山

2016ジュニアウィンブルドンのチャンピオン、[3]シャポバロフだが、芝シーズンに入ってから2大会連続初戦敗退とここまでは奮わない成績。ここで一つ結果を残し、ウィンブルドン前に自信をつけたいところ。改めて調べてみると、2016ジュニアウィンブルドンは決勝がシャポバロフvsデミノー、シャポバロフの準決勝の相手がチチパス、と錚々たるメンツ。伸び悩む選手も多い中、順調にキャリアを重ねている選手が多い当たり年。

逆サイドは、[7]ジョンソンメドベーデフM.ズベレフと芝が得意な選手が集まった。特にジョンソンvsメドベーデフは昨年QFの再現。昨年はメドベーデフがフルセットの末勝利を収め、その後2017ワシントンと今年のインディアンウェルズでもメドベーデフが勝利。ジョンソンはリベンジなるか。

■エドムンド山

何と言っても[WC]ワウリンカvs[WC]マレーに注目せざるを得ない。わずか1年前に全仏OPで準決勝を戦っていた2人が、250の初戦で互いに3桁ランクとして対戦となる。どちらも早く本当の意味で復活して欲しい選手。ワウリンカ8勝vsマレー10勝と肉薄するこのカードで、きっかけをつかむことができるか。なお、クレーではワウリンカ優勢(4-1)、ハードではややマレー有利(4-7)、芝ではマレー優勢(0-2)となっており、これを踏まえるとマレー有利か。

芝が苦手な[2]エドムンドとすると、どちらの迷惑ノーシードが来ても状態が並以上なら厳しい戦いとなるか。

[6]フェレールは7・8月の大量失効を前に、いよいよ正念場。2回戦まではドローにも恵まれ、ここは何としても結果を残して欲しい。

■全体

イーストボーンもアンタルヤ同様、絶対的な存在は不在。マレーは前週キリオスの前に1回戦で負けはしたものの、プレーは悪くなかった。試合を重ねるごとに調子を上げていければ本命となる可能性も十分あるか。

全体的に、芝得意な選手が固まったブロックと芝苦手な選手が固まったブロックに別れた印象が強い。特にシャポバロフ山は好勝負が続出しそうな予感。

また、予選には芝のCHで準優勝→優勝と無双状態のデミノーがいる。予選を勝ち上がった場合、どこのドローに入るかも注目だ。

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