【プレビュー】2018Week25(ハレ、ロンドン/クイーンズクラブ)

Week24は、シュトゥットガルトがフェデラー、スヘルトーヘンボスがガスケの優勝で幕を下ろしました。終わってみれば芝を得意とする実力者が上位進出するという結果となりました。

さて、Week25は短い芝シーズンの中で唯一500の大会が開催される週です。500の出場義務もあるので、トップ選手はこの週のどちらかの大会に出場する選手がほとんどです。エントリーリストを眺めてみると、ハレはやや上位陣が薄め、クイーンズはとんでもなく豪華なメンバーといった印象でしょうか。ジョコビッチ、ワウリンカ、ラオニッチがノーシードで登場、そして何と言っても全テニスファンが待ち望んでいたアンディ・マレーの帰還です。

ハレ(ドイツ、ATP500、Grass)

2015年より、250→500と格上げされた大会です。「フェデラーの庭」と言っても過言ではない程、フェデラーが圧倒的な強さを誇る大会です。15回の出場で優勝9度、準優勝2度、4強2度、8強2度、59勝6敗。クレーナダルを見た後だとあれですが、十分すごすぎる成績です。ちなみに通算9度の優勝は、ウィンブルドンやバーゼルの8度を抑えてフェデラーの自身最多優勝記録です。クレーシーズンを全スキップから戻ってきて、いきなりシュトゥットガルトを制したフェデラーを誰が止めるのか?それともフェデラーが記念すべき10勝目を挙げるのか?

そして、錦織圭杉田祐一マクラクラン勉と3人の日本人が登場します。こちらも要注目です。

詳しいドローはこちらをご覧下さい。→Halle draw

■フェデラー山

クレー全スキップ後初戦のシュトゥットガルトではミーシャ、キリオスに最終セットまで持ち込まれるもしっかりと優勝を納めた[1]フェデラーに死角は無しか。むしろ、調子は良さそうだった2人を競り合った上で倒したことは、試合勘という意味では単なる優勝以上の意味があるかもしれない。今大会でも序盤は負けるイメージの湧きづらい相手が続く。

対抗シードの[6]コールシュライバーは前の週のシュトゥットガルトでまさかの1回戦負け。2週連続母国で初戦敗退は絶対に避けたいところだろう。少なくとも芝で実績のほとんどないフチョビッチには勝っておきたいところだが、2回戦はシュトゥットガルトで準決勝まで勝ち進んだ芝が得意な[SE]エブデン、QFは通算0勝13敗と勝ったことのないフェデラーという相手が予想され、厳しいドローか。

■ティエム山

クレーコートではまさに主役級の活躍を見せた[3]ティエムだが、クレー以外ではなかなか安定した成績が残せないシーズンが続いている。今年はそんな評判を覆す活躍ができるのか、クレー後初出場となるこの大会でのプレーに注目が集まる。

アンタルヤ優勝の失効を目前に控え、何としても結果を残したい杉田の初戦の相手は[WC]マーテラー。全仏オープンで16強入りして50位までランクを上げてきた勢いのある若手を倒すことができるか。2回戦での対戦が予想されるティエムも芝の上では付け入る隙はありそう。どんな内容であれ結果が欲しい。

[5]プイユvsチチパスは1回戦屈指の好カード。今シーズン、マスターズ以上の大会ではほとんど勝ち進めていないプイユだが、500以下では強さを見せている。一方のチチパスは先週のスヘルトーヘンボスで優勝したガスケにタイブレ2発で敗れたものの、芝でも戦えることを示した大会となった。逆サイドのティエムが絶対的とは言い難いので、この対決の勝者がスルスルと勝ち上がる可能性も十分にある。

■バウティスタ・アグー山

プレースタイル的には全くそんな印象がないのですが、(試合数が多くないとは言え)実は芝が最も勝率の良い[4]バウティスタ・アグー。初戦の相手のシュトルフはサーブは強いが、芝であまり勝てておらず、2回戦も芝が得意とは言えない相手。序盤は比較的楽なドローか。

対抗シードは[7]錦織。錦織ファンとしては、アグーに昨年ウィンブルドンのリベンジを、という思いが先行してしまうが、まずはミーシャ・ズベレフvsカチャノフの勝者と当たる2回戦がタフ。ミーシャはシュトゥットガルトでフェデラーと好勝負を演じており好調、カチャノフは昨年のこの大会で準決勝まで進出している。錦織は昨年2回戦のカチャノフ戦でリタイアしており、嫌な記憶が蘇る。初戦の[Q]バッキンガーは復帰直後のダラスCHで破った相手であり、普通にプレーすれば勝てる可能性はかなり高いか。ただ、3年連続リタイア・棄権を強いられている大会なので、どんな結果であったとしても最後まで怪我をせずに戦いきることが錦織圭にとって最重要である。

■サーシャ山

この大会で2年連続準優勝の[2]A.ズベレフの初戦はチョリッチ。芝で大きな成績は残せていないものの、今シーズン好調の実力者であり油断できない。2回戦はドイツ勢同士の勝者との対決となるが、ここは普通に行けばサーシャに死角なしだろう。

対抗シードは、スヘルトーヘンボスを制した[8]ガスケ。勢いに乗っている芝巧者ではあるものの、サーシャvsガスケは昨年のハレSFも含めてサーシャの4戦全勝。ガスケとしては辛いドローか。

■全体

優勝争いは普通に行けば、昨年決勝カードでもあり第1、第2シードでもあるフェデラーサーシャが中心となるだろう。

日本勢は、とにかく結果が欲しい杉田とウィンブルドンに向けて健康を保ったまま状態を上げていきたい錦織、と立場は対照的。二人とも悪くないドローであり、上位進出を期待したいところではある。

■ダブルス

日本人としては夢のペア、マクラクラン勉錦織圭組がついに実現。シングルスで日本人歴代最高位の錦織圭とダブルスで日本人歴代最高位のマクラクラン勉のペア、これを夢のペアと呼ばずに誰を呼ぶ?というレベルで期待は膨らむばかり。マクラクランは3大会連続で初戦敗退が続いており、気分一新、悪い流れを断ち切りたいところ。このペアがうまく機能するのであれば、デビスカップに向けても朗報となる。

ロンドン/クイーンズクラブ(イギリス、ATP500、Grass)

こちらもハレ同様、2015年から500に格上げされた大会で、歴代最多5度の優勝を誇るのが今大会が復帰戦となるマレークエリーチリッチディミトロフF.ロペスも含め、直近9年間の優勝者が全員揃い踏みしました。

第4シードが9位、第8シードが19位、ラストDAが59位ということで、ランキング的には500の平均的なレベルですが、怪我などでランキングを下げている選手が多数参戦している影響でとんでもないエントリーリストとなりました。なんとジョコビッチマレーラオニッチワウリンカがノーシードから参戦です。初戦から超豪華カードが続出する、大注目の大会となりそうです。

詳しいドローはこちらをご覧下さい。→Queen’s Club draw

■チリッチ山

今シーズンは非常に安定した戦いを見せている[1]チリッチにとって得意な芝シーズンがやってきた。ここクイーンズは昨年の準優勝も含めて優勝1回、準優勝2回と相性の良い大会。序盤の相手は、初戦ベルダスコ、2回戦シャポバロフorミュラーということで冷静に考えると激しいドローなのだが、もっと酷い場所がいくつもあるのでこれでもマシに思えてくる。

逆サイドには[5]クエリーワウリンカ。2010年の優勝者であるクエリーだが、今シーズンは不調に喘いでいる。得意の芝シーズンで反撃に出たいところ。復調のきっかけとしたいのはワウリンカも同じ。ローマから復帰したが、復帰後わずか1勝しかできず、ランキングは200位台まで落ちてしまった。芝は決して得意ではないが、なんとか1ptでも多く稼いでおきたいところだろう。2人とも初戦はWCの若手(ワウリンカの相手はすでにTOP100の[WC]ノーリエだが)であり、ここでは貫禄を見せつつ状態を上げていきたい。

■ゴファン山

全体的に激しいドローとなった今大会の中でも、最も注目が集まるのがこのゴファン山。この8人がベスト8だよ、と言われても誰も疑問を持たないだろう、というメンバーが揃った。

オールラウンダーの実力者[4]ゴファンの初戦の相手はディフェンディングチャンピオンのF.ロペス。F.ロペスは昨年ワウリンカ、シャルディー、ベルディヒ、ディミトロフ、チリッチという錚々たるメンバーを撃破して優勝を手にした。この勝者は前週シュトゥットガルトで準優勝したラオニッチとの対戦が予想される。

逆サイドでは、キリオスvsマレーというとんでもないカードが1回戦から実現。キリオスはマレーを非常に慕っているが、そのせいで闘争心に火がつかないのか、過去5戦全敗でわずか1セットしか取れていない。一方、直近の離脱者の復帰過程を見ると、復帰戦から結果を残すことができている選手は少なく、マレーとしてもそう簡単に結果が出るとは考えていないだろう。ただ、どちらが勝ち上がってくるにせよ、[7]エドムンドからするとまさに迷惑ノーシードであることは間違いない。

■アンダーソン山

今シーズンは苦手なクレーでも結果を残すなど、安定感が増してきている[3]アンダーソン。得意とは言い難い芝でも結果を残すことができるのか、注目したい。アメリカの若手対決、ドナルドソンvsティアフォーは、派手な組み合わせが続く今大会の中では地味かもしれないが好カード。

対抗シードの[8]ソックは依然として復調のきっかけが見出せず、大会に出続けているのにレースランキングは3桁のままである。初戦はこちらもやや壁に当たっているメドベーデフであり、チャンスもありそうだが、2回戦はスヘルトーヘンボス準優勝の[SE]シャルディーが予想され、正直シードのソックではなくシャルディーが勝ち上がるのが順当という評価になってしまうだろう。

■ディミトロフ山

2014年の優勝者[2]ディミトロフは2回戦で[WC]ジョコビッチとの対戦が予想される超タフドロー。実は現時点のレースランキングがディミトロフ11位、ジョコビッチ19位であり、ファイナル争いにおいてボーダー近くで争う可能性がある選手でもある。錦織、ゴファンなども10位台におり、最後の最後まで激しく縺れることも予想されるため、このような大会の結果が鍵を握る可能性もある。

対抗シードは[8]ベルディヒ。クレーコートで1勝もできず、得意の芝コートで巻き返しを図りたいところだったが、シュトゥットガルトではQFでラオニッチにタイブレ2発で敗戦。ウィンブルドンSFの大型失効前に何としても結果を残したい。序盤も楽な相手ではないが、初戦でジョコビッチ、マレー、ラオニッチ、ワウリンカ辺りと当たる可能性もあった今大会においては相当マシなドロー。

■全体

名前だけを見ると超豪華なドローだが、復帰直後の選手など不確定要素も多く、誰が上位進出するか全く予想がつかない。ただ一つ言えるのは、ウィンブルドンに各選手がどのような状態で臨むか調べる上では非常に有効な材料となることは間違いない。

そして、とにかく何と言ってもアンディ・マレーの帰還が最大の注目ポイントだろう。彼がどの程度の状態で戻って来ているのかによっては、シーズン後半戦の様相が大きく変わる可能性がある。

■ダブルス

なんと、ジョコビッチワウリンカがペアを組んでダブルスに出場。実は2013北京と2014トロントでペアを組んだことがあります。シングルスのトッププレイヤー同士が組んだからといって強いとは限らないが、さすがにワクワクせざるを得ないペア。その初戦の相手はベルディヒベルダスコ組ということで、なんとも豪華なメンツの対戦となる。

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