【プレビュー】2018Week41(上海MS)

楽天オープンでは、シングルスで錦織が、ダブルスでマクラクラン勉・シュトルフ組決勝進出するなど、日本勢の活躍が目立ちました。その他にも、綿貫が予選を勝ち上がり本戦で1勝、ソールズベリー内山組もSFと、今の日本勢の勢いが表れた大会となったのではないでしょうか。

また運営面では、例年の有明コロシアムではなく一年限りの武蔵野の森総合スポーツプラザ開催となりましたが、同一空間に2面あることによる騒音問題(これは流石に努力でどうにかなる問題ではない…)以外は苦情も少なく非常に良い大会になったと思います。私は金曜の観客総入替も体験しましたが、雨の中にも関わらずスムーズに誘導できていた印象を受けましたし、何より有明コロシアムでは絶対に体験できないアリーナ席の角度からの観戦には感動しました。本当に関係者の皆様、ありがとうございました。

※当記事の各種記述については、東京・北京の決勝前時点のものとなります。

上海(中国、Masters、Hard)

画像出典:https://www.atpworldtour.com/en/tournaments/shanghai/5014/overview

北米・ヨーロッパ以外で唯一開催されるマスターズの大会。2009年に始まり今年が10回目という、比較的新しい大会でもあります。初年度にダビデンコが優勝したのを除くと、マレー3回、ジョコビッチ3回、フェデラー2回と全てBig4が優勝しています。

■フェデラー山

※Ranking,Race Rankingは10/1付(東京、北京などは未反映)、その他は東京、北京の準決勝まで反映。

ディフェンディングチャンピオン、2度の優勝を誇る[1]フェデラーは全米以来の出場となります。そもそもこの年齢でこの位置にいるのが驚異的なのですが、流石にスタミナ切れを起こすことが増えてきました。昨年はデルポトロ、ナダルという強敵を連破して優勝したこの大会で、今シーズンのマスターズ1勝目を手にすることができるか、やはりフェデラーの体力がどこまで続くかが鍵となるでしょう。勝っても負けても体力を削られそうな錦織/シュワルツマンとの対戦が予想されるQFが優勝を見据える上では一つの山になるでしょうか。

そのフェデラーと2回戦で対戦することが予想されるのは楽天オープンで予選から決勝進出を果たしたメドベーデフ。楽天オープンでは素晴らしいプレーを続けていましたが、予選から7試合を戦い抜きどれだけ体力が残っているでしょうか。フェデラーとはテンポが全く違うテニスなので、どのようなラリーになるかは楽しみです。

そのメドベーデフ相手に楽天オープンでは良いところなく敗れた[14]ラオニッチ。度重なる怪我の影響か、身体にもショットにもキレが無いように見えました。上海はマスターズで唯一QFに進出したことがない、苦手な大会です。QFに到達するにはフェデラーとの対決が想定されるR16を勝たねばならず、苦しい戦いが予想されます。

楽天オープンで決勝進出し、ツアーファイナルへ一縷の望みをかける[8]錦織。初戦はTOP200圏外の地元WC選手同士の勝者と、これ以上ないドローです。続くR16は[9]シュワルツマンとの対戦が予想されますが、いずれも直近の対決で敗れているハーセ(2018カナダMS)やクエリー(2016アカプルコ)が勝ち上がってくる可能性もあります。楽天オープンの調子であれば、誰であっても優勢と思われますが、相性を考えるとシュワルツマンが一番与し易いかもしれません。

カナダMSに続いての対戦となる[9]シュワルツマンvsクエリーは好カード。前回はフルセットの末シュワルツマンが勝利しましたが、約30cmの身長差がある対決には今回も注目です。

順当に勝ち進むと、QFでフェデラーvs錦織となりますが、実現すればあの2017全豪以来の対戦となります。両者にとっての大きなターニングポイントとなったあの試合、錦織としては忘れ物を取りに行く戦いとなるでしょう。

SF進出予想は、本命:フェデラー、対抗:錦織、穴:シュワルツマンアグーメドベーデフです。楽天オープンの調子を維持できるのであれば、フェデラーと錦織の差はかなり小さいと思います。そのくらい楽天の錦織は良かった。また、メドベーデフも疲労に打ち勝つことができればフェデラー・錦織につぐ3番手だと思います。

■デルポトロ山

※Ranking,Race Rankingは10/1付(東京、北京などは未反映)、その他は東京、北京の準決勝まで反映。

北京でも決勝進出、ハードではかなりの強さを見せている[3]デルポトロ。昨年はサーシャを破るなどSFまで進出しました。優勝候補の一角であることは間違いないでしょうが、序盤の想定カードがガスケ→チョリッチ/ワウリンカ/キリオスとなかなかハードです。2回戦の対戦が予想されるガスケは楽天オープンでも良いテニスを見せていました。対戦成績はデルポトロの6勝1敗ですが、最後の対戦はもう5年前。あまり参考にはならないでしょう。

デルポトロ、ガスケらとR16で対戦するブロックが大激戦区となりました。最近は少し調子を落としていますが、インディアンウェルズでSF、ハレではサーシャ・フェデラーを破って優勝と飛躍の年になった[13]チョリッチ、復帰直後は浮き沈みがありながらも、カナダMSあたりからは本格的に輝きを取り戻し始めている[WC]ワウリンカ、怪我に苦しめられたシーズンでまだまだ本調子とは行かないが、やはりプレーレベルの上限は高いキリオス。これに予選勝者を加えた4名の中から1名しかR16に進めません。チョリッチvsワウリンカは1回戦屈指の好カードでしょう。

[6]ティエムは苦手なこの季節もサンクトペテルブルクで優勝するなど奮闘しています。レースランキングでは7位ですが、8位のアンダーソンとはほぼ差がなく、錦織がスパートをかけているのも若干不気味です。対抗シードは絶不調の[12]ソック、ノーシード勢も爆弾レベルの選手はおらず、マスターズとしては恵まれたドローとなった今大会で、何としてもQF以上には進出しておきたいところでしょう。

その他ノーシード勢では、唯一の本戦出場となった2011年にQFまで進出しているエブデンが少し気になります。当時3桁ランクながら、予選から当時12位のシモンを破るなどしてQFまで進出しました。ただ、その後予選に3度臨むも1試合も勝てておらず、コートの相性というよりは単純に調子の波が当たったと見るのが正解かもしれません。

SF進出予想は、本命:デルポトロ、対抗:ワウリンカティエムガスケ、穴:チョリッチキリオスです。大激戦区のデルポトロ側が注目度高いですが、意外とティエムが掻っ攫っていくシナリオもあるかもしれません…

■A.ズベレフ山

※Ranking,Race Rankingは10/1付(東京、北京などは未反映)、その他は東京、北京の準決勝まで反映。

北京でもR16でジャジリに敗れるなど、少し調子を落とし気味な[4]A.ズベレフ。芝シーズン以降はワシントン優勝を除くとやや物足りない結果が続いています。クレーシーズンであれだけ頑張ったので、ややお疲れ気味なのは仕方ないとも思いますが、最近は精神面の脆さを指摘されることが多い点は気になります。次世代No.1候補としてものすごいプレッシャーの中戦っているのでしょう。中堅以上のTOP選手たちは多かれ少なかれ苦しい時期を乗り越えてさらに強くなってきました。サーシャもここを乗り越えてもっと強くなって欲しいです。

そんなA.ズベレフの初戦の相手はシャポバロフvsバシラシビリという好カードの勝者です。シャポバロフは楽天オープンでチョン→ワウリンカ→シュトルフというきついドローを勝ち上がりSF入りしました。SFではメドベーデフに全く自分のテニスをさせてもらえませんでしたが、状態が悪くないのは確かです。一方のバシラシビリは北京で決勝進出。好調同士の好勝負が期待されます。

楽天オープンでは初戦敗退を喫した[5]チリッチ。デ杯クエリー戦から少し気になる敗戦が続きましたが、しっかりマスターズに調子を合わせられているでしょうか。周りに絶好調の選手や爆弾級の選手はおらず、マスターズにしては比較的序盤のドローは恵まれています。まずはQFまで勝ち上がり、上位を伺っていきたいところでしょう。

[11]エドムンドは全豪SF、マラケシュ準優勝といったシーズン当初の勢いからだいぶ落ちてきてしまっているな、と思って眺めていましたが、北京ではSFと久々に結果を残しました。キャリアハイの14位までランキングを上げた勢いそのままに、再び旋風を巻き起こせるでしょうか。

[15]カレーノブスタは昨シーズンまではクレーコーターの印象が強かったのですが、今シーズンはマイアミSF、シンシナティQFなどハードの成績の方が断然良くなっています。初戦の予選勝者で誰を引くかも重要ですが、好調デミノーとの対戦が予想される2回戦は正念場となるでしょう。それにしてもデミノー、シャポバロフ、バシラシビリとノーシード勢が元気なゾーンとなりました。これでもし予選勝者枠にペール、クリザンなどが来たら、さらに激戦となるでしょう。

その他ノーシード勢ではクレーコートで大活躍したジャリーが気になります。全米ではイズナーとフルセットに及ぶ激戦を繰り広げており、ハードコートであのテニスを続けられるのであれば、すぐにTOP30に入ってくると思います。ぜひチリッチとの対戦が見てみたいです。

SF進出予想は、本命:チリッチ、対抗:A.ズベレフ、穴:デミノーシャポバロフカレーノブスタです。チリッチ、サーシャの上位シード勢が優勢だとは思いますが、元気なノーシード勢にも付け入る隙はあるはずです。

■ジョコビッチ山

※Ranking,Race Rankingは10/1付(東京、北京などは未反映)、その他は東京、北京の準決勝まで反映。

強い[2]ジョコビッチが帰って来た以上、このブロックは当然彼中心に考えなければなりません。しかも上海は7度出場して全てSF以上3度の優勝を誇る得意サーフェスです。通算27勝4敗、敗れた相手はフェデラー2回にダビデンコとアグーが1回ずつだけ。ここで彼を止めるのは至難の技と言えそうです。

逆サイドには楽しみなシード選手2人が揃いました。

まずは今シーズン本当に一皮剥けた[7]アンダーソンです。上海での成績はそこまで良くありませんが、彼の場合は昨年までとは別人と考えた方が良いでしょう。ツアーファイナル出場を確実にするためにも、ジョコビッチと当たるQFまで何としても勝ち進みたいところです。

そのアンダーソンと向き合うシードポジションには[10]チチパス。シンシナティ以降はやや調子を落とし気味ですが、それでもカナダMS準優勝はあまりにも衝撃的でした。今回はなかなかのタフドローとなりましたが、思えばカナダMSもTOP10選手と5連戦というとんでもないドローでした。今回は果たして…

チチパス周りはジョンソンvsハチャノフモンフィスvs[10]チチパスと大激戦区になりました。ちょうど若手vsベテラン(ジョンソンは中堅?)という構図となりました。ここから1人しか90pt以上を獲得できないとは、厳しいドローです。

その他では、2014年に準優勝するなど上海が大得意シモンに注目です。ベルディヒ、ワウリンカをそれぞれ2度ずつ倒すなど、通算17勝9敗と素晴らしい成績を残しています。R16まで勝ち進めば、想定される対戦相手はジョコビッチ。このカードといえば、2016全豪4時間半に渡る死闘が思い出されますね。

SF進出予想は、本命:ジョコビッチ、対抗:アンダーソンチチパス、穴:シモンハチャノフです。正直、他の山の本命と比べてもここのジョコビッチが一番堅いかと、そのくらい今のジョコビッチは強いと思います。

■全体

優勝争いは、無難に考えれば本命:ジョコビッチ、対抗:フェデラー、穴:デルポトロチリッチなど、といった感じでしょう。

注目は、8年続いているBig4の支配が途切れるかどうか。ここ最近、大きな大会におけるBig4の連続優勝記録が途絶えるケースが増えて来ています。2016年にチリッチがシンシナティ(8年連続)を止めたのを皮切りに、2017年はサーシャがローマ(12年連続)を止め、2018年はインディアンウェルズ(7年連続)、マイアミ(7年連続)、マドリード(ハード時代から計10年連続)が止まりました。マスターズでは最長継続中がここ上海となります。(なお、ウィンブルドンは16年連続Big4が優勝している模様。)

そして、ツアーファイナル争いも大詰めを迎えて来ました。6位チリッチまでは流石に当確だと思いますが、7位アンダーソン、8位ティエムも上位進出して確定させたいところです。9位イズナーは欠場、10位錦織は上位進出が必須な情勢となっています。

また、NextGen Finalsの方も気になる季節となって来ました。サーシャはツアーファイナルの方に出場するためこちらは欠場すると考えると、2位チチパスからシャポバロフデミノーティアフォーと1000pt超は確定、フリッツルブレフまでは濃厚、残るDA1枠(NextGenは1枠WCなのでDAは7枠)をムナール以下で争う展開でしょうか。上海出場組では予選出場中のハルカッチが暫定10位に付けており、出場権獲得のためにはビッグポイントを一つ稼ぎたいポジションにいます。

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