【Road to London】2018 Nitto ATP Finals出場権争い展望(Wimbledon終了時点) 〜錦織が出場権獲得できるか、少し真面目に考察してみた〜

ウィンブルドンが終了し、今シーズンも残るグランドスラムは1大会、マスターズは4大会ということで、折り返し地点を大きく通過しました。こうなると、気になってくるのがRoad to London、Finals出場権争いですね。

特に錦織ファンの方々は、ウィンブルドンで錦織自己最高の8強という成績を残したものの、ロンドン争いのライバルであるジョコビッチ優勝アンダーソン準優勝イズナー4強と素晴らしい結果を残したことで、不安な気持ちが募って来ているのではないでしょうか。

ということで、プレビュー記事を2週間お休みして、この長ったらしいタイトルのロンドン争い展望記事を準備しました。ちなみに、この記事は「錦織ファン」の視点から、「錦織が出場権を獲得できるか」というテーマで執筆したという点にご留意ください。純粋に出場権争いの展望という意味では、レースランキングで錦織のすぐ下にいる(しかもポイント差があまりない)ディミトロフラオニッチフォニーニエドムンドチョリッチシュワルツマン…etcといった選手も考慮する必要があります。そして、何よりこの記事を準備している間にウマグで優勝して錦織を抜き去ったチェキナートもいます。ただ、錦織が出場権を獲得するには、これらの選手の上に行くことは正直「必要条件」です。この中の誰かの後塵を拝するような状況で出場権を獲得できるということはほぼ無いでしょう。ですので、今回は彼らについては考察していません。逆に、現時点でレースポイントが1500pt前後の選手を応援している方は、「錦織」の部分をその選手に入れ替えて読んでいただければ、と思います。

1.現状の整理

※ウィンブルドン終了時点のデータなので、まだ錦織が10位です。

まずは現状を整理しましょう。ロンドン争いが面白くなりそうな展開となっている一番の要因は、大きなポイントが分散していることでしょう。ここまで3つのグランドスラムのファイナリスト6名は全て異なる選手となっています。ATPツアーが現行のポイント制度となった2009年以降のグランドスラムファイナリストをまとめてみました。ウィンブルドンまでで6人のファイナリストが誕生しているのはなんと2005年以来13年ぶり、5人以上まで条件を緩めても2010年以来8年ぶりという珍しさです。

これに加えて、今年グランドスラムファイナリストになっていないA.ズベレフデルポトロイズナーがマスターズタイトルを獲得しており、現時点のTOP9全員が1大会で1000pt以上のビッグポイント持ちということになります。これだけ大きなポイントが分散しているということです。

もう一つ、注目しておくべき点は「Others」のポイントです。500以下(+モンテカルロ)からは上位6大会のポイントのみが加算される仕組みですが、上の表を見ていただくとわかる通り、ティエムのみ6番目も90ptが埋まっています。すなわち、ティエムは仮に250で優勝しても160ptしか稼げないということです。ティエム以外の選手はせいぜい4番目に45ptが入っているかどうかという程度。これは全米後のアジアシーズン・欧州インドアシーズンの大会で追い込みをかけようと思った時に効いて来る可能性があります。

2.直近のロンドン争いを振り返ってみる

直近4年分の「ウィンブルドン後」および「最終」のレースランキングをまとめました。「afterWB」はウィンブルドン後に積み上げたレースポイントの値です。特にボーダーライン付近の6〜10位あたりを中心に眺めてみると、怪我で長期離脱した選手、および終盤戦苦手な大会が続くティエム以外は1000pt前後が最も多くなっていることが分かるかと思います。今年に当てはめてみると、8位のアンダーソンに1000ptを加えると3820pt。この前後と考えると、3600〜4000ptくらいがボーダーとなるでしょうか。

そう考えると、すでに4000pt超えているフェデラーナダル確定、3300pt以上のA.ズベレフデルポトロジョコビッチ当確かと思います。(ジョコビッチはグランドスラム優勝者の特例も絡んできますが、長くなるので今回は触れません。)

ということで、私がロンドン争い対象者だと思っているのは、ティエムチリッチアンダーソンイズナー錦織です。念のためもう一度言いますが、ウィンブルドン終了時点でレースランキング11位以下の選手には可能性が無いと思っている訳ではありませ。あくまで錦織が出場権を獲得できるか、という観点で考察する上ではこのメンツでほぼ十分だろうということです

ちなみに、なぜ直近4年分なのかというと、答えは簡単です。ATP公式サイトから毎週のレースランキングが参照可能なのがなぜか2014年以降のみだからです。流石にこれを力技で調べるのは辛いので…何か良いデータソースを知っている方はこっそり教えてください。

3.ロンドン争い対象者(と私が思っている)5名の成績比較

続いて、前述の5名の過去の成績を見てみたいと思います。あまり厳密に判定していませんが、現行のポイント制度となった2009年以降かつ年末30位前後以内となった年以降の成績をまとめています。ちなみに全て手作業でまとめたので細かい誤りはある気がしますが、結論に大きく影響しない誤りはスルーして下さい。

なお、この章のデータの「Total」欄は、OthersのBest6大会制限を考慮していません。すなわち、全大会のポイントの単純合計です。また、一部の年度では大会の順序を多少入れ替えていたりします。これらの点をお含み置き下さい。

●ティエム

2016年以降、潔いほどのクレー特化ぶりを見せています。しかも彼の場合にはOthersではほぼ稼げないので、ウィンブルドン以降の成績が過去と同じだとすると2015:520pt、2016:440pt、2017:470ptしか稼げていません。現時点で2995ptであり、過去と同水準の成績だと3500pt前後止まりとなる可能性があります。

●チリッチ

ウィンブルドンでは大コケしてしまったにも関わらず、実はウィンブルドン終了時点のレースポイントは自己最高を記録しています。そもそも、チリッチはスロースターターとして有名で、シーズン後半戦は優勝経験のある全米やシンシナティはもちろん、上海、パリのマスターズでも結果を残していますし、アジアシリーズ・欧州インドアシリーズの500以下の大会でもかなり実績があります。2014〜2016は3年連続で1500pt以上をウィンブルドン以降で稼いでおり、今年も大きなアクシデントが無ければ1500pt前後上積みして4200〜4600ptは確保する可能性が高いと見ています。

●アンダーソン

ウィンブルドン準優勝という素晴らしい成績で、一気にロンドン出場権にかなり近づきました。実は既に年間獲得ポイントの自己記録を更新することが確定しています。そのくらい充実したシーズンを送れているということです。この先の大会を見てみると、全米・カナダは得意、シンシナティ・上海はやや苦手、といった所でしょうか。ここまでは明らかにキャリアハイのシーズンを過ごしているので、過去のポイントを額面通りに受け取って良いかは判断が難しいですが、約500pt〜約1800ptとレンジは広めです。流石に昨年の全米準優勝は出来すぎと考えると、500〜1100ptで、フィニッシュ予想は3300〜3900pt。正直、個人的には一番読みづらいと思っています。

●イズナー

今シーズンはマイアミマスターズ優勝、ウィンブルドン4強と2大会で大躍進をみせ、この位置につけました。一方で1コケ6回と、不安定な成績になっている感も否めません。しかし、イズナーはここからが得意なシーズンです。優勝3度を誇るニューポートは欠場しましたが、優勝4回・準優勝3回を誇るアトランタ、準優勝2回のワシントン、優勝2回のウィンストンセーラムと500以下でも得意な大会が目白押しです。そしてシンシナティ、パリという得意なマスターズ大会も控えています。例年、ウィンブルドン後に1000〜1600pt程度獲得しており、フィニッシュ予想は3200〜3800pt程度でしょうか。

●錦織

そして、最後に錦織です。怪我の影響で出遅れましたが、モンテカルロで準優勝を飾って以降は例年並みに近いポイントを稼げています。ウィンブルドン以降は怪我で欠場することが多く、マスターズ以上の5大会すべてに出場できたのは、大会終盤まで勝ち上がれなかった頃の2013年まで遡ります。そのため、この期間の獲得ポイントも大きく変動しています。普通に大きなアクシデントもサプライズ的な躍進も無く終えると1000〜1500pt程度でしょうか。すなわち、フィニッシュが2600〜3100pt程度と予想されます。

●(ここまでの)まとめ

最終レースポイント(予想)をまとめてみると、

ティエム:3500前後

チリッチ:4200〜4600

アンダーソン:3300〜3900

イズナー:3200〜3800

錦織:2600〜3100

ということで、チリッチは濃厚、ティエム・アンダーソン・イズナーが接戦でここから2枠、錦織は厳しい、というのが冷静な予想です。ボーダーラインは3500前後、3400〜3700くらいを予想しています。

4.錦織が逆転するために必要な成績

ということで、錦織は厳しい、というのが現時点の見解ではありますが、ファンとしては諦めるわけにはいきません。そこで、どの程度の成績を残せば逆転可能かを考察して見ました。

前述の通り、ボーダーラインは3400〜3700と考えると、錦織は約2000ptの上積みが必要となります。直近4年間でウィンブルドン後に2000pt以上上積みしたのはBig4を除くと以下の5名6例です。

2014チリッチ2016ワウリンカは全米優勝一発で到達したパターン、2014ラオニッチ2017デルポトロは中規模以上のポイントを数多く積み重ねたパターン、2014錦織2016チリッチは1000pt以上のビッグポイントに加え、500優勝やマスターズSFを積み重ねた、前2パターンの中間とも言えるパターンです。

2018錦織で一つ大きなポイントとなるのは、上位シードが確保されていないということです。現在のランキングは20位であり、アーリーラウンドでフェデラー、ジョコビッチ、ナダルなどと当たる可能性も十分に考えられます。そう考えると、多くの大会で安定した成績を残すことはかなり難しく、一発大きなポイントを当てる方が可能性が高いと考えます。ちなみに、ドローという意味ではなるべく出場権争いのライバルであるティエム、アンダーソン、イズナーの近くを引きたいです。その理由はここまで読んでくださった方なら分かりますよね?

以上をまとめると、私の見解としては全米OP決勝進出orマスターズ優勝orマスターズ決勝進出2回or全米OP4強+マスターズ決勝進出のいずれかを達成できるかどうかがボーダーラインになると考えています。実現するのは結構難しいでしょうが、不可能な目標ではありません。ファンとしてはある意味ちょうど良い、応援しがいのあるボーダーラインなのではないでしょうか。

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